一般診療
GENERAL PRACTICE

機能性ディスペプシア

胃に関する項目
「みぞおちが痛む」「みぞおちが焼けるような感じがある」「食後に胃がもたれる」「食事の途中ですぐお腹がいっぱいになる」「みぞおちの当たりを中心にお腹が張る」「ゲップが良く出る」「吐き気が続く」などの症状が半年以上続いている場合は、機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)かもしれません。
ただし、機能性ディスペプシアの診断は検査で食道や胃、十二指腸などの臓器に問題がある病気が存在しないことが大前提です。機能性ディスペプシアだと思っていたら、実は食道や胃の病気が原因であったというケースもあります。自己判断は行わずに症状がある場合は、必ず消化器内科を受診し、原因を調べてもらいましょう。

機能性ディスペプシア自己診断チェックリスト

「機能性ディスペプシアかもしれない」「今は症状が無いけど気になる」という人は、次の自己診断チェックリストをチェックしてみましょう。症状と生活でそれぞれ1個以上当てはまる場合は、機能性ディスペプシアの可能性があります。是非一度、当クリニックへご相談ください。
【症状】 【生活】
□ 食後につらいと感じる胃もたれ感がある □ ストレスを感じる事が多い
□ 食事開始後すぐにつらいと感じる胃の満腹感がある □ 不規則な生活をしていることが多い
□ つらいと感じるみぞおちの痛みがある □ タバコを吸っている
□ つらいと感じるみぞおちの焼ける感じがある □ 脂っこいものばかりたべている
□ 健康診断では特に異常がないといわれた □ ほとんど運動をしていない

機能性ディスペプシアとは?

機能性ディスペプシアは胃内視鏡検査をしても胃潰瘍や胃がんなどの臓器の異常が無いにもかかわらず「胃がもたれる」「胃が痛い」「胃がむかつく」「胃が張って食事が食べられない」などの上腹部症状を来す機能性消化管障害です。
機能性消化管障害とは、消化管粘膜に潰瘍などの炎症やがん等の症状の原因となるような臓器の病気を認め無いにもかかわらず、消化管運動異常などの臓器の機能的な異常(働きの異常)が原因で症状が出現する疾患の事です。機能性ディスペプシアは主に「胃」の機能的な異常により症状が出現します。
「ディスペプシア」は、「消化不良」を意味するギリシャ語が語源です。つまり、機能性ディスペプシアとは胃の機能的な異常により消化不良を来たし、胃もたれなどの症状が起こる疾患というイメージでしょうか。
機能性ディスペプシアは日本人の5人に1人が発症しているという報告もあり、特に若い女性に多くみられます。
症状が続くと食事量が減り、痩せたり、体力が低下したり、仕事や勉強に身が入らないなど日常生活の質が低下するため、つらい疾患です。

機能性ディスペプシアの症状

機能性ディスペプシアの診断は検査で食道や胃、十二指腸などの臓器に問題がある病気が存在しないことが大前提です。機能性ディスペプシアだと思っていたら、実は食道や胃の病気が原因であったというケースもあります。自己判断は行わずに症状がある場合は、絶対に放置せず必ず消化器内科を受診しましょう。
特に食事が食べられないぐらい症状がひどい場合や急に体重が減少している場合は、早急に受診しましょう。下記に示したのは症状の具体例です。
  • 胃が焼けるような感じやヒリヒリする感じがする
  • 胃が痛む
  • 胃がもたれる
  • 胃がむかつく
  • みぞおちが重苦しい感じがする
  • みぞおちの辺りを中心にお腹が張る
  • 食事の途中ですぐお腹いっぱいになって食べ物を全部食べることが出来ない
  • ゲップが良く出る
  • 吐き気が続く …など
→症状の感じ方は、人により個人差がかなりあります。この病気の症状はこうで無いといけないというものはありません。あくまでも上記の具体例は、症状の一例です。
診察時にご自身がつらいと感じている症状をそのままご自身の言葉で伝えて頂くのが最も大切です。また、診察時には
「どういう時に症状が出現しやすいか」
「症状を軽くしたり悪化させるものがあるか(姿勢や食事、行動や朝・昼・夜の時間で症状が変わるかなど)」
もあればお伝えください。

機能性ディスペプシアの診断

機能性ディスペプシアの診断は、2016年に発表された国際的な診断基準である「RomeⅣ基準」を用いて診断します。RomeⅣ基準では症状の原因となりそうな臓器の病気はないにも関わらず、食道・胃・十二指腸が原因と考えられる4つの症状のうち1つ以上の症状があること、これらの症状は日常生活に影響するようなつらいと感じるものであること、その症状は6ヶ月以上前から出現しており、直近の3ヶ月間に週数回程度症状があることと定義しています。
また、RomeⅣ基準では機能性ディスペプシアは、「みぞおちの痛み(心窩部痛)」または「みぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感)」のいずれかがある場合を心窩部痛症候群(Epigastric Pain Syndrome:EPS)、「つらいと感じる食後の胃もたれ」または「食事開始後すぐの満腹感(食事開始後すぐに胃がいっぱいなり、食事を最後まで摂取できない)」のいずれかがある場合を食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome:PDS)と2つの病型に分類しています。なお、この2つの病型が重複することもあります。

RomeIV基準による機能性ディスペプシアの診断基準と病型分類

5-1.機能性ディスペプシア(FD)の診断基準

下記の症状のいずれかが診断の少なくとも6か月以上前に始まり、かつ直近の3か月間に下記症状があり、症状を説明しうる臓器そのものに異常となる病気はない。
  1. つらいと感じるみぞおちの痛み(心窩部痛)
  2. つらいと感じるみぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感)
  3. つらいと感じる食後のもたれ感
  4. つらいと感じる早期満腹感

5-2.機能性ディスペプシアの病型分類

【食後愁訴症候群(PDS)の診断基準】

少なくとも週に3日、次のいずれかの症状を満たす。
  1. つらいと感じる食後のもたれ感
  2. つらいと感じる早期飽満感

【心窩部痛症候群(EPS)の診断基準】

少なくとも週に1日、次のいずれかの症状を満たす。
  1. つらいと感じるみぞおちの痛み(心窩部痛)
  2. つらいと感じるみぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感)

機能性ディスペプシアの原因

機能性ディスペプシアの原因は残念ながらまだ明らかになっておらず、複数の因子が関与していると考えられています。その中でも特に、胃の運動機能異常、胃の内臓知覚過敏、心理的因子がその原因として大きな影響があると考えられています。
最近では細菌やウイルスによる感染性腸炎の治癒後に機能性ディスペプシアが発症することがあることも報告されています。また、ピロリ菌の除菌によって症状が改善する場合はピロリ菌関連ディスペプシアとして、機能性ディスペプシアから切り分けて考えられています。

6-1.胃の運動機能異常

胃の運動機能異常は、①胃からの食物の排出遅延、②胃の膨らみの障害が原因です。
正常な胃は、食事を摂取すると胃の天井部分(穹隆部)が膨らみ、そこに一旦食事が溜まり、徐々に胃の出口付近(前庭部)で粥状になるまで消化され、胃の出口付近(前庭部)が収縮することで十二指腸へ排出されます。機能性ディスペプシア患者の約20~40%では、この胃からの排出能が低下しており、胃からの食物の排出遅延がみられます。胃からの食物の排出遅延により食物が胃に長くとどまることで、胃もたれ、食後膨満感、嘔気などの症状が出現すると考えられています。
また、何らかの原因で胃の膨らみが悪いと、胃の下部に食べたものが溜まってしまうため、すぐお腹一杯になってしまいます。さらに、食事が胃で十分に消化されることなく急速に送り出され十二指腸が急に膨張すると、反射的に胃の運動が低下します。また、十二指腸で処理しきれなかった食べ物は、胃に逆流し、停滞するため、さらに消化不良を起こし、胃もたれが生じるという悪循環が連鎖していくことになります。機能性ディスペプシア患者の約40~50%では、胃の膨らみの障害が見られ、早期の胃の満腹感の原因となります。
これらの胃の運動機能異常は、特に食後愁訴症候群(PDS)と強く関連していると考えられています。

6-2.胃の内臓知覚過敏(胃酸への感受性が強い)

通常、胃酸が分泌されても胃粘膜は何も感じませんが、胃酸に対する感受性が強くなると胃に痛みを感じるようになります。「みぞおちが痛む」「食後に胃がムカムカする」「酸っぱいものがこみ上げてくる」という症状がある人は、胃の感受性が強すぎる内臓知覚過敏が原因と考えられます。
機能性ディスペプシアでは、胃からの食物の排出遅延により胃内に食物が長時間停滞します。このため、持続的に胃壁が伸展され、また食物による化学的刺激に長時間暴露されます。さらに、胃の膨らみの障害による胃の内圧の上昇や胃壁の過剰な伸展により胃の知覚過敏が引き起こされると、低刺激での腹部膨満感や早期の胃の満腹感、胃部不快感、胃の痛みなどにつながると考えられています。

6-3.心理的要因(ストレスが多い)

医療機関を受診した機能性ディスペプシア患者は、パニック症候群と同程度の社会的ストレスを受けており、うつ的要素や不安的要素が強いと報告されています。
機能性ディスペプシアは、胃の運動が悪くても、胃の知覚過敏でも症状が出現しますが、ストレスはこの両方に悪影響を及ぼします。ストレスを受けると脳の視床下部からコルチコトロピン放出因子(CRF)というストレスホルモンが分泌され、胃の動きが鈍くなり、胃の運動不全が起こり胃の膨らみが悪くなるため胃もたれを引き起こします。また、ストレスは胃酸の分泌を増やし、胃の知覚過敏も引き起こします。さらに、胃もたれや胃痛などが起こると、その症状自体もストレスになるため、さらに症状が悪化するという悪循環に陥ります。休日はゆっくり休んだり、好きなことをして楽しむなど、ストレス解消に努めるのが最も大切です。

6-4.感染性腸炎治癒後

細菌やウイルスによる感染性腸炎の治癒後に機能性ディスペプシアが発症することがあることも報告されています。

6-5.アルコール、喫煙、不眠、暴飲暴食などの生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れが機能性ディスペプシアの原因となることがあります。生活習慣を見直すことで症状が改善することがあります。

機能性ディスペプシアの治療

機能性ディスペプシアは、症状が続くと食事量が減り、痩せたり、体力が低下したり、仕事や勉強に身が入らないなど日常生活の質が低下するため、つらい疾患です。治療には食事療法や薬による治療を行いますが、様々な要因が絡み合った病態であり、原因も明らかではないため、残念ながら誰にでも効果のある治療はありません。どの治療が合うかは患者様によって異なり、症状が改善するまでに要する時間も人それぞれです。これを御理解頂くことが治療への第一歩となります。

①食事療法

胃の運動機能障害に対する治療のメインは食事療法です。摂取した食事が胃から排泄されるまでの時間(胃内滞留時間)が長くなると、胃もたれ症状が悪化するため、消化に時間がかかる食事の摂取を避けましょう。胃内滞留時間はタンパク質、炭水化物、脂肪の順に長くなります。脂肪分の多い天ぷらやビーフステーキなどは胃の滞留時間が長いため、胃もたれや吐き気を起こしやすくなります。

②生活習慣の改善

アルコール、喫煙、不眠、暴飲暴食などの生活習慣の乱れが機能性ディスペプシアの原因となります。
しっかりした規則正しい食事と生活習慣が症状を改善するためには最も大切です。ここを改善しないで症状を無くすことはできないと言っても過言ではありません。

どんなに忙しくても朝食はしっかり取りましょう。朝は交感神経が緊張しているため、胃の動きが抑制され、胃の運動能力は低下していますが、1日のスタートの朝食をしっかり取ると、1日の胃腸リズムが保たれ、胃腸の運動能力が十分に発揮されるようになります。また、胃の運動には、「日中の食後の噛み砕き運動」と「夜間~明け方の空腹時お掃除運動」の2種類がありますが、3食しっかり規則正しく摂取することで胃の運動リズムが整います。さらに、胃に連動して小腸、大腸も活発になります。ダイエットは胃腸の動きを悪くして症状を悪化させます。

③ストレスの軽減

機能性ディスペプシアは、胃の運動が悪くても、胃の知覚過敏でも症状が出現しますが、ストレスはこの両方に悪影響を及ぼします。ストレスの原因が明らかな場合は、それを軽減する事で症状が改善することがあります。
ストレスの軽減が難しい場合は、心療内科的な認知行動療法や薬物療法(抗不安薬や抗うつ薬など)が有効なこともあります。

④薬物療法

食事療法のみで不十分な場合は、胃の膨らみを改善する薬(アコチアミド)で治療を行います。効果が出るまで、服用開始から3週間程度かかります。また、アコチアミドの処方には内視鏡検査が必須となります。
漢方薬の六君子湯も有効です。六君子湯に含まれるヘスペリジンという成分が胃の緩み(適応性弛緩)を促して、胃の運動機能を高めます。
また、胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプ阻害剤、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)も有効なことがあります。胃酸の分泌を抑え、胃酸への感受性が強くなった胃の知覚過敏の状態を和らげる効果が期待できます。

寝る前に食事をすると胃もたれするのも機能性ディスペプシア?

夜遅くにご飯を食べると、翌朝に胃もたれや胃痛があり、朝食が食べられなかったという経験はありませんか?。これは機能性ディスペプシアではなく、健康な人にも起こる反応です。夜遅い食事の摂取は、胃の働きに反しているため、症状が出現します。
胃の運動には、大きく分けると「食後の噛み砕き運動」と「夜間の空腹時お掃除運動」の2つがあります。食後は胃の天井部分(穹隆部)が大きく膨らみ、消化活動が始まり、さらに胃の出口付近が1分間に3回程度収縮することで、食べものを噛み砕く噛み砕き運動を行い、食べ物をドロドロの粥状になるまで噛み砕いて消化し、十二指腸へ送り出しています。
食後8時間程度経過し、胃内が空になると、今度は胃の天井部分(穹隆部)が大きく収縮し、胃にまだ残っている食べ物のカスや細胞が剥げ落ちたものなどを十二指腸へ押し流す空腹時のおそうじ運動を行います。このとき、大きな収縮をすることで胃が「グー」と音は鳴らすこともあります。このように胃は日中は食事の消化のための噛み砕き運動を行い、深夜から明け方にかけてお掃除運動をしていますが、夜遅くに食事を摂取すると、寝ている間も噛み砕き運動をしなければならず、お掃除運動に移ることができません。この結果、翌朝になっても胃の中に食べ物が溜まったままとなるため、胃もたれが起こります。
胃を元気にするためには、規則正しい食事を心がけることが大切です。
夜食は基本的にNGですが、どうしても夜食を取りたい場合は、お粥や豆腐、スープ、ホットミルクなどにするとよいでしょう。夜食として油を使っている食事を取ることは絶対に止めましょう。

当クリニックの胃内視鏡検査(胃カメラ検査)の特徴

機能性ディスペプシアの診断は、検査で食道や胃、十二指腸などの臓器に問題がある器質的疾患が存在しないことが大前提です。胃や腸に症状の原因がないかを診断する為には、胃内視鏡検査が必要です。
当クリニックでは、「苦しさと痛みに配慮した胃大腸内視鏡検査」を患者様に提供することを第一に考え、皆様から検査後に「思った以上に楽だった」と思っていただける内視鏡検査を実践しています。当クリニックの内視鏡専門医は、臓器のポイント毎にどのような内視鏡操作を行えば苦しさと痛みに配慮した検査になるのかを熟知しております。これまで培ってきた内視鏡技術の経験を十分に活かし、検査を行っています。安心してお任せください。
また、最新の機器を使用し、その知識と技術を駆使して正確な内視鏡診断を行っています。皆様が消化管がんにかかり健康を損ねることがないよう最大限のサポートが出来るよう日々努力しております。まずはお気軽にご相談ください。