こんにちは、医師の中島です。
2025年4月から適用された「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、これまでの2020年版よりも食物繊維の摂取目標量がやや引き上げられました。
積極的に食物繊維を摂ることで、様々な生活習慣病や死亡リスクが低下することがわかってきているからです。
今回はそんな食物繊維についてのお話です。
テーマ : 食物繊維
目次 :
1, 食物繊維の秘められたカ
2, ◯◯性食物繊維、いくつ知ってますか?
3, 心と体の健康に直結する腸内環境
4, 理想の食べ合わせ
「三大栄養素」の一つ、炭水化物にはヒトの消化酵素では消化できず、そしてエネルギー源にもならない成分が含まれますが、それが食物繊維です。
以前は、消化・吸収ができず、エネルギー源にもならない食物繊維は「食べ物のカス」とされていました。しかし、便通改善で腸内環境を整えたり、脂質・糖質などの吸収を緩やかにして、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧、脳卒中、癌などのリスクを下げる効果が期待できる栄養素として、「第6の栄養素」と呼ばれるようになりました。
【水溶性食物繊維】…腸内細菌のエサとなり、腸内で発酵されることで、多くの健康効果を有する短鎖脂肪酸がつくられる。
代表的な水溶性食物繊維には、イヌリンやペクチンなどがあり、昆布やわかめなどの海藻類や、こんにゃく、果物などに多く含まれます。
【不溶性食物繊維】..水分を吸収して膨らみ、便のカサを増やすことで腸を刺激して排便を促したり、有害物質を吸着して体外への排泄を促進します。
代表的な不溶性食物繊維には、セルロースやヘミセルロースなどがあり、穀類や豆類、芋類などに多く含まれます。
食材によって、この2種類の食物繊維の含有量や比率は異なります。「食物繊維が豊富だから」と、1種類の食材だけを多く摂るのではなく、様々な食材から両方の食物繊維をバランス良く摂ることが大切です。

腸には有益な働きをする善玉菌と、有害な働きの悪玉菌、そのいずれか優勢な方につく日和見菌がいます。また、人体の免疫細胞の約7割は腸にあるため、腸をキレイにすることで免疫力が高まります。さらに、”幸せホルモン”といわれるセロトニンやドーパミンの体内合成にも関わり、感情の安定やポジティブ思考の維持にも貢献します。
腸内環境を整え、善玉菌を活性化させることで、身体も心も元気に保ち、毎日を生き生きと過ごすことにつながります。
わかめ✖️えのき茸
わかめは水溶性食物繊維が特に豊富で、乾燥わかめの約39%は食物繊維で、乾燥わかめ4gで、何とレタス1/2個分の食物繊維が摂れることになります。
えのき茸は不溶性食物繊維が豊富で、さらにビタミンB1の含有量はきのこの中でもトップクラス。きのこの中では比較的クセがなく、さまざまな料理に応用できます。
大根✖️梅干し
大根は不溶性食物繊維やカルシウム、葉酸などを豊富に含みます。生のものも使い勝手が良いですが、切り干し大根になるとこれらの栄養素が数倍にもなります。
梅干しは水溶性・不溶性両方の食物繊維をバランス良く含みます。腸の悪玉菌の働きを抑えるクエン酸も豊富で、腸内環境を整えるにはもってこいの食材です。
いかがでしたか?
食物繊維には、実はもう1つ、◯◯性食物繊維という分類があります。
これこそが私たちの健康を左右する重要な鍵を握っているのですが、それはまた次回へ。
週の中日ですね、一息ついて後半もがんばっていきましょう。