おはようございます。医師の秋山です。
さて、今回はコレステロールの薬と腸活との関係性について、最新の知見を交えて話をしたいと思います。

コレステロールの薬ですが、結構飲んでいる人多いですよね。
コレステロールを下げる薬の代表は、スタチン系の薬です。これは皆さんもご存知ではないでしょうか。
プラバスタチンとか、シンバスタチンとか、必ず語尾に〇〇スタチンとついてますのですぐわかると思います。
ここで、スタチン系の薬がコレステロールを下げるメカニズムをごくごく簡単に説明すると、
①肝臓でコレステロールが作られるのですが、スタチン系の薬がこの邪魔をして肝臓でコレステロールが作られないようにします。
②コレステロールの生成を邪魔された肝臓は、血中に流れているコレステロールを肝臓に取り込もうと考えます。LDLというトラックに乗ったコレステロール(これが俗に言うLDLコレステロール)をもらおうと考え、肝臓でLDL受容体を増加させます。
③LDL受容体を増やしたことで、肝臓内に沢山のLDLコレステロールが取り込まれ、結果的に血中のLDLコレステロールが減ります。
こんな感じですね。
コレステロールは体の細胞を作る材料になるだけでなく、各種ホルモンだったり、ビタミンDの材料にもなるわけですから、体にとって重要な物質なんです。
ですから、肝臓でコレステロールが枯渇すると、肝臓も焦ってLDL受容体を増やして、血中にあるコレステロールを取り込もうとするわけなんですね。
さて、そんなコレステロールの薬ですが、毎日腸活をしている我々にとっては無視できないような論文報告がありました。
マウスレベルの報告ですが、スタチンを投与することにより腸内細菌叢が変化し、それが原因で糖尿病のリスクが高くなったとのことです。
She J, et al, “Statins aggravate insulin resistance through reduced blood glucagon-like peptide-1 levels in a microbiota-dependent manner” Cell Metab. 2024 Feb6;36(2):408-421.e5. doi:10.1016/j.cmet.2023.12.027.
具体的に説明すると、スタチン系の薬により、短鎖脂肪酸を産生する菌が減少し、腸内環境が増悪したということでした。
これにより、腸からのGLP-1分泌能力が低下するとのこと。GLP-1は膵臓のGLP-1受容体にくっついてインスリンを分泌するのですが、GLP-1が分泌されなければインスリンも分泌されませんので、糖尿病のリスクが高くなってしまう、というメカニズムです。
実は、スタチン系の薬で糖尿病のリスクが上がるという報告は以前から知られていました。
2008年のJUPITER試験では、糖尿病の発症が27%増加するという有名な報告があります。
Paul M Ridker, et al,” Rosuvastatin to prevent vascular events in men and women with elevated C-reactive protein” N Engl J Med.2008 Nov20;359(21):2195-207.
今回の2024年の論文報告により、スタチンでの糖尿病のリスクが上がる原因として、腸内細菌叢が乱れることにより起こってくるということが考えられそうですね、
以前、腸内環境を乱す原因のトップ3をYouTubeの動画でも上げました。腸内環境を乱す原因の第1位は薬剤でした。ちなみに2位が加齢、3位が食事になってます。
しかも薬剤は、加齢や食事と比べると短時間で腸内環境を乱しますし、しかも薬剤は加齢や食事などと比べると、約3倍も腸内環境を乱しやすいという報告があります。
Nagata, N. et al, “Population-level metagenomics uncovers distinct effects of multiple medications on the human gut microbiome” Gastroenterology 163, 1038–1052 (2022)
もちろん、スタチンを含め、薬剤にはベネフィットがあるから飲むのですが、その裏には必ずリスクも存在します。
リスクとベネフィットを考えて、むやみに薬を飲まないようにしたいところです。
以上、コレステロールの薬と腸活の関係性の話でした。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。