福岡天神内視鏡クリニックブログ

脂肪肝の恐さ

こんにちは、医師の中島です。

 

今回は脂肪肝の行く末のお話です。

 

脂肪肝を放置すると、どうなるか。

まず、脂肪肝の方の10~20%がMASH(マッシュ:代謝機能障害関連脂肪肝炎)、いわゆる非アルコール性脂肪肝炎という肝臓の炎症を伴っており、この炎症が続くことで肝機能は徐々に低下し、肝硬変や肝臓がんへ進行する例がみられます。

近年では、MASHを原因とする肝硬変の患者数が増加しており、アルコール性肝硬変に迫る勢いです。

かつて肝臓がんの原因の9割以上を占めていたのは

B型・C型肝炎ウイルスでしたが、現在は脂肪肝による肝臓がんの割合も増えています。

 

「脂肪肝を放置した結果、一番恐ろしいものは何か?」、僕は迷わず「肝硬変」と答えます。

前回もお話しましたが、肝臓は沈黙の臓器といわれ、ほとんど自覚症状が出ないため、何らかの自覚症状が出たときには、知らぬ間に脂肪肝や脂肪肝炎へ進行していることも珍しくありません。

黄疸やむくみなどの症状が出始め、「何かおかしい」と気づいたときには肝硬変に進行しているのです。

正常な肝臓は赤くてツルツルした柔らかい感触ですが、肝硬変へ進行した肝臓は、その名のとおり、「コンコン」と音がするくらい硬くなり、サイズが小さくなります。外科での研修医時代に触れた肝硬変のゴツゴツした感触が今でも忘れられません。

肝硬変になると腸からの血液が十分通わなくなり、食道胃静脈瘤などの原因になります。肝臓でアルブミンという蛋白質が作られなくなり、血管から水分が漏れ出して足がむくんだり、腹水がたまったり、最終的には肝臓がんを発症するケースも珍しくありません。

 

では、肝硬変は一体どのように進んでいくのでしょうか。そもそも肝硬変は、肝臓の細胞が破壊されていく過程で、肝臓全体が硬くなって、機能が低下する疾患です。まず、脂肪肝の状態が続くと慢性的な炎症状態になり、その修復過程でかさぶたのような線維を出す細胞ができます。炎症が続くことで、この線維がどんどん分厚くなって、正常な肝細胞の居場所がなくなるのが「線維化」で、これが一定以上進むと、肝硬変となります。

脂肪肝→脂肪肝炎→肝硬変という流れで進みますが、なかでも肝細胞の炎症である脂肪肝炎の発症が一つのポイントになります。脂肪肝の状態が黄色言号だとしたら、脂肪肝炎はもう赤信号だと思ったほうがいいでしょう。

さらに脂肪肝炎を放置すれば、5年間で20%の割合で肝硬変に進行します。いくら再生能力の高さを誇る肝臓であっても、腹水がたまり、利尿剤を使わないとコントロールできないような状態になってしまうと、再生能力は機能せず、もう正常な状態に戻ることはありません。ほぼ機能不全状態に陥っており、平均余命は2年といわれています。

 

いかがでしたか?

年々脂肪が蓄積し、知らず知らずのうちに脂肪肝炎→肝硬変へと進行するのは本当に恐いですね。

早め早めの対策が肝心です。

 

週の中日ですね、一息ついて後半もがんばっていきましょう。

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