こんにちは、医師の中島です。
11月も半ばになりますが、まだまだ暖かい気温が続いていますね。
皆さま、秋の味覚は堪能されていますか?
食材それぞれを単品で摂るのももちろん美味しいですが、それらを組み合わせて摂ることで食材の栄養素を最大限に引き出すことができます。
今回はトリプトファンとビタミンB6についてのお話です。
あらゆるストレスには脳内で働くホルモンが大きく関係しています。”幸せホルモン”としても有名なセロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンと並ぶ、三大神経伝達物質の一つです。
このセロトニンが”幸せホルモン”と呼ばれる理由は、ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神を安定させる働きがあるからです。
現代人はセロトニンが不足しやすく、セロトニンが不足すると、この2つのコントロールが不安定になり、攻撃性が高まったり、不安やうつ・パニック症などの精神症状を引き起こしたりするといわれています。
セロトニンをつくる原料は、タンパク質を構成する必須アミノ酸の「トリプトファン」です。しかし、体内では生成することができないため、トリプトファンが含まれる良質なタンパク質(大豆製品や青魚類、脂身の少ない肉類)から摂る必要があります。食べ物から摂取したトリプトファンは、日中は脳内でセロトニンに変化し、夜になると睡眠を促すメラトニンに変化します。そのため、トリプトファンの不足は、不眠症や睡眠の質の低下を引き起こす原因にもなります。
また、メラトニンには抗酸化作用があるため、老化を抑制するアンチエイジング効果があります。
そして、トリプトファンからセロトニンを合成するときには、「ビタミンB6」や「マグネシウム」などが必要で、一緒に摂取することで、セロトニンの分泌量の増加が期待できます。
それでは、トリプトファンとビタミンB6の理想の食べ合わせの一例をご紹介します。
鮭にはトリプトファンをはじめとした必須アミノ酸がバランス良く含まれ、またビタミンB6などのビタミンB群も豊富です。抗酸化作用が強いアスタキサンチンや、血管年齢を若く保つオメガ3脂肪酸も含まれている高タンパク食材。養殖ではなく、天然の鮭を選びましょう。
さつまいもは、ビタミンB6のほか、C、E、パントテン酸、葉酸、カリウム、銅などが豊富で、さつまいも1本でさまざまな栄養素を補うことができます。主食のご飯にさつまいもを混ぜて、手軽に栄養価をアップしましょう。
豆乳はトリプトファンが豊富で調理にも使いやすく、また大豆イソフラボンといわれる、女性ホルモンに似た成分がホルモンバランスを整えてくれるため、更年期障害にもおすすめです。
バナナはビタミンB6をはじめとしたビタミンB群やマグネシウムも豊富。手軽に食べられて腹持ちがよく、エネルギー源にもなるため、スポーツ選手が試合中に食べている風景もよく見かけますね。
その他、トリプトファンを含む食材として、豆腐・納豆・味噌などの大豆製品、そば、卵、ナッツ類などがあります。ビタミンB6を含む食材として、さば、さんまなどの魚類、鶏胸肉やささみ、玄米、ごま、ブロッコリーや赤パプリカなどの緑黄色野菜などがあります。
なお、トリプトファンの1日あたりの目安摂取量は、18歳以上で、4.0mg/kg体重/日ですので、体重が60kgの方の場合、1日に必要なトリプトファンの摂取量は240mgです。以下をご参考に目安摂取量を守りましょう。
出典:厚生労働省【日本人の食事摂取基準(2020 年版)】
いかがでしたか?
食材の食べ合わせを意識して、効率的に栄養を摂取したいものですね。
週の中日ですね、一息ついて後半もがんばっていきましょう。