福岡天神内視鏡クリニックブログ

便秘治療についてまとめてみました。その1

おはようございます。医師の秋山です。

 

さて、今回は便秘治療についてまとめてみました。

今回のまとめですが、2023年に日本消化管学会により作成された「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」に基づいてます。

 

ここでは、便秘の原因となる疾患が腸管内に認めない「機能性便秘症」の中でも一番原因として多い「排便回数減少型」の便秘に対する治療についてまとめてます。

 

まあでも便秘で悩んでいる方のほとんどがこの「排便回数減少型」ですので、参考になる方も多いのではないかと思います。

 

それではまず質問ですが、

 

「便秘で悩んでいる方、まずは何をしようと思いますか?」

 

おそらく、ドラッグストアに走り込んで、便秘薬を買おうとする方がほとんどではないでしょうか。

一時凌ぎであればそれで良いかもしれませんが、それではそのうち必ず負のループに入ってしまいます。

 

まずは生活習慣の改善が第一選択です。

生活習慣の改善とは、食事療法と運動療法です。

 

「忙しいからそんなことしてる暇ないんですけど」

という声が聞こえてきそうです。

 

でもダメです。ガイドラインでも、「まずは生活習慣の改善から治療しましょう」ときちんと書いてます。

生活習慣の改善を怠ると、一生便秘薬から離れられなくなります。

 

これは2023年に出た論文ですが、便秘薬を長期に内服している方は、将来的に認知症になりやすいという衝撃的なデータが出ました。

Yang Z, et al, “Association Between Regular Laxative Use and Incident Dementia in UK Biobank Participants.” Neurology. 2023 Apr 18;100(16);e1702-e1711.

 

これは刺激性下剤だけでなく、便秘の患者さんがほぼ100%使用している酸化マグネシウムなどの浸透圧性下剤も当てはまります。

特に複数の下剤を利用している人ほど認知症のリスクが上がるとのことです。

 

一般的に、認知症は女性の方が多いのですが、便秘薬の影響もゼロではないと思います。

認知症になりたくない方、ぜひまずは生活習慣の改善から始めましょう!

 

それでは、食事療法のコツを伝授したいと思います。

 

食物繊維を食べると便秘が良くなる、というイメージがありませんか?

私もそう思います。ただ、食べる時間帯が重要です。

まずは朝に食物繊維をしっかり摂りましょう。

 

実は朝、昼、夕のうち、朝食の時に食物繊維を摂るのが一番効果的と言われています。

朝食時に食物繊維を摂ると、昼食時や夕食時と比べ、食後の短鎖脂肪酸量が増えたり、腸内細菌の多様性が上がるとのことです。

朝食時に食物繊維を摂った方が、便秘も改善しやすいという報告もされています。

Hyeon-Ki Kim,et al, “Ingestion of Helianthus tuberosus at Breakfast Rather Than at Dinner Is More Effective for Suppressing Glucose Levels and Improving the Intestinal Microbiota in Older Adults.” Nutrients. 2020 Oct 03;12(10); pii: E3035.

 

そしてガイドラインでは、以下のような食べ物が便秘に有効であると挙げられています。

・グアーガム分解物(PHGG)

・キウイフルーツ

・プルーン

・サイリウム(オオバコ)

グアーガム分解物やサイリウムはサプリメントで発売されていますが、なかなか手にすることは難しいです。でも、キウイやプルーンはスーパーに必ず売ってますよね。

ぜひこれらを摂取してみましょう。

 

次に運動療法に関してですが、便秘には有酸素運動が有効と言われています。

 

一般的に、身体活動性が低い人は、食事療法の効果が低いです。ですから、食事療法だけ行っても運動しなければ効果はあまり出ないんですよね。

これは日本人に対する研究ですが、40歳以上では、ウォーキング、ランニング、筋トレは結腸通過時間を短縮するという報告があります。

Nakaji S, Tokunaga S, Sakamoto J, et al:” Relationship between lifestyle factors and defecation in a Japanese population.” Eur J Nutr 41:244-248, 2002

 

なお、運動量については一定の見解に乏しいです。

個人的には、1回30分程度の有酸素運動を週3回行えば十分ではないかと思っています。

 

便秘で悩んでいる方の中には、できれば運動はしたくないと思っている方も多いでしょう。

その場合は、お腹のマッサージが有効です。

1日15分、週5回のお腹のマッサージが便秘に有効であるという報告があります。

Lamas K, Lindholm L, Stenlund H, et al: Effects of abdominal massage in management of constipation – a randomized controlled trial. Int J Nurs Stud 46:759-767, 2009

いかがでしょうか。

 

食事療法に加え、運動療法も行うことにより相乗効果が期待できます。

ぜひ今日から始めてみましょう。

目安は3ヶ月です。即効性はないのでまずは3ヶ月頑張ってみてください。

それでも効果に乏しければ次は内服治療ですが、これは次回にしたいと思います。

 

それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。