おはようございます。医師の秋山です。
さて、前回は最新の便秘治療ということで、「生活習慣の改善」について解説しました。
2023年に日本消化管学会により作成された「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」によれば、慢性便秘症の治療でまず初めに行う治療法がこの「生活習慣の改善」です。
これを2〜3ヶ月行い、それでもダメな場合はいよいよ内服治療となります。
ここでも、ガイドラインに沿って内服治療の解説を行いたいと思います。
今回は専門的な内容になりますので、読むのが辛い方は最後のまとめだけ読んでください!
①まずは浸透圧性下剤を使用!
浸透圧性下剤を簡単に説明すると、硬くなった便に水分を与えて軟らかくして排便しやすくする薬のことです。
以下の3種類に分けられます。それぞれ代表的な薬が以下となります。
・塩類下剤・・・酸化マグネシウム
・糖類下剤・・・ラクツロース(ラグノス)
・高分子化合物(PEG)・・・モビコール
ラクツロース、モビコールは処方薬しかありませんが、酸化マグネシウムは市販されています。まずはこれを使ってみましょう。
これらの薬とよく一緒に使われるのが、漢方薬や整腸剤です。
この2つの薬は、ガイドラインでは「代替・補助治療薬」という位置付けになってます。
ですので、酸化マグネシウムだけでは心許ない場合、ドラッグストアで売っている整腸剤や漢方薬を一緒に併用しても良いです。
そして①で効果に乏しければ次のステップに行きます。
②次は、上皮機能変容薬か、あるいは胆汁酸トランスポーター阻害薬を使用!
さすがに②からは専門的な薬になりますので、病院での治療になります。
上皮機能変容薬とは、小腸内にクロールイオンの分泌を増加させることにより、ナトリウムイオンが腸管内に分泌され、腸管内への水分の分泌が増えて便が軟らかくなり、排便回数が増加します。
代表的な薬としては、ルビプロストン(アミティーザ)、リナクロチド(リンゼス)です。
胆汁酸トランスポーター阻害薬ですが、胆汁酸は、腸管粘膜に作用して、ぜん動運動を亢進させる作用、および大腸内に水分を分泌させる作用があるのですが、この胆汁酸の再吸収を阻害することで、大腸内の胆汁酸の量を増加させて上記の作用を増やし、便秘を治します。
代表的な薬としては、エロビキシバット(グーフィス)です。
ここで、内服薬を利用する上でのコツを伝授したいと思います。
1.プロトンポンプ阻害薬といった胃薬を用いている患者さんは酸化マグネシウムの効果が落ちるので、胃の粘膜バリアを修復する機能があるルビプロストン(アミティーザ)を選択すると良いです。
2.同様に、ロキソニンやカロナールなどの鎮痛剤を常用している方も、胃の粘膜バリアを修復する機能があるルビプロストン(アミティーザ)を選択すると良いかと思います。
3.ただし、ルビプロストン(アミティーザ)は若い女性で吐き気が起こりやすいので要注意です。また妊婦さんには使えません!
このため、若い女性の方はエロビキシバット(グーフィス)やPEG製剤(モビコール)を使う形が良いでしょう。
4.腹痛を伴うような便秘症にはリナクロチド(リンゼス)がベストです!この薬は、内臓痛覚神経繊維にも作用して痛みや不快感を改善させる作用があるという優れものの薬になります。
5.糖尿病患者などの基礎疾患があり、腸のぜん動運動が落ちている方は、腸の運動を亢進させるエロビキシバット(グーフィス)を選択すると良いかと思います。
6.市販されているコーラックなどの刺激性下剤や浣腸などは、オンデマンド治療(頓用)という位置付けになります。使っても週1回程度までにしてください。頻回に使用する場合は現在の治療薬の変更を考えましょう。
いかがだったでしょうか。
便秘治療のまとめですが、
・まずは生活習慣を改善する!食事療法と運動療法はセットで行わないとあまり効果はありませんので頑張ってみましょう。3ヶ月が目安です。
・生活改善をしても治らない場合、内服治療になります。まずは市販されている酸化マグネシウムを使いましょう。この時、併用して整腸剤や漢方薬の便秘薬もOKです。
・これでダメなら病院を受診して②以降で治療を行いましょう。
以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。