こんにちは、医師の中島です。
先週より、さらに寒くなりましたね。
あったかいお鍋にお酒が沁みる、そして寒さが億劫になり運動の機会は減りがちに、、身体は次第に重くなっていく、、、
日々の診療で、ほぼ毎日お目にかかるのが、腹部エコー検査で見つかる「脂肪肝」です。
健康診断などで「脂肪肝」を指摘されても、「肝臓に脂肪がついているだけで、特に体調に変化ないし、大した問題ないじゃん」と、放置してしまう人が少なくありません、いやむしろ多い印象です。
ですが、実は、脂肪肝は非常に危険な状態です。
あなどってはいけません。
まずは脂肪肝の基礎知識から。
本来、脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪といった脂肪組織に蓄えられますが、糖質や脂質の過剰摂取、運動不足が続くと、臓器の細胞にまで脂肪がたまるようになり、脂肪肝はその一例です。日本人の成人の、実に3人に1人が脂肪肝という報告もあります。
脂肪肝は男性では30〜40代、女性では更年期以降の50代から増え始めますが、生活習慣が乱れがちな20〜30代からみられることも少なくありません。
本来の肝臓の色味は赤いのですが、脂肪肝になった肝臓は白っぽく変化し、鴨のフォアグラにそっくりです。
実際に画像診断で脂肪肝と診断されるのは、肝臓細胞の30%以上に脂肪が蓄積した状態で、自覚症状こそないものの、貯まった脂肪が肝臓の働きを徐々にジャマし始めます。
近年の研究において、実は脂肪肝(肥満)こそが生活習慣病の発端、「万病のもと」であることがわかってきました。2003年に慶應義塾大学の伊藤裕氏が「メタボリックドミノ」という概念を世界で初めて提唱しました。
伊藤裕:日本臨牀,61(10),1837-1843,2003
生活習慣病はある日突然起こるのではなく、ドミノ倒しのように1枚目のドミノが倒れると、連鎖的に次々と病気を発症していくという考え方で、このメタボリックドミノの1枚目に位置するのが脂肪肝(肥満)というわけです。

脂肪肝(肥満)が起点となり、高血圧、糖尿病、動脈硬化、心血管疾患、脳卒中、さらにはがんへと次々に病気を発症していきます。脂肪肝が様々な病気のリスクを高め、脂肪肝のない場合と比べて、大腸がんは約3倍、乳がん・食道がんは約2倍、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は約1.8倍、心不全は約2倍と、飛躍的に高まることがわかっています。こわいですよね。
脂肪肝は肝臓だけの問題ではありません。
次回は脂肪肝の原因についてお話していきます。
週の中日ですね、一息ついて後半もがんばっていきましょう。