おはようございます。医師の秋山です。
さて、今回は加工肉と大腸がんの最新の知見について解説します。

ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉って手軽で美味しいですよね。皆さんも好きじゃないでしょうか?
しかしながら、この加工肉って以前から大腸がんのリスクになると言われており、皆さんもなんとなく加工肉は体に悪いと思ってるのではないでしょうか。
加工肉に関してですが、2015年、国際がん研究機関(IARC)は加工肉に対して、
「毎日継続して50グラム摂取するごとに、大腸がんのリスクが18%増加する」
と発表したのは有名です。
当時、この発表は世界に衝撃を与えました。加工肉の売り上げが落ちる国もあったそうです。
ちなみに加工肉50gの目安を表にしてみると
| 1つの重さ | 50gの目安 | |
| ハム(スライス) | 15g(1枚) | 3枚ちょっと |
| ベーコン(スライス) | 18g(1枚) | 2.5~3枚 |
| ウインナー | 30g(1本) | 2本 |
| フランクフルト(ホットドッグ) | 60g(1本) | 0.8本 |
といった感じです。なんか50gってすぐ食べてしまいそうですよね。
加工肉が大腸がんのリスクを上げる要因ですが、以下の4つが指摘されています。
①加工肉の鮮度維持、防腐目的に使用される硝酸塩、亜硝酸塩が体内で「ニトロソ化合物」という発がん性物質に変化して大腸の粘膜にチクチクとダメージを与えて大腸がんのリスクが高くなります。
②加工肉を焼いたり揚げたり調理すると、複素環式アミン、多環式アミンといった発がん性物質が生成されます。特に焦げた部分は発がん性が高いです。
③加工肉に含まれるヘム鉄が、腸内で酸化を引き起こし、活性酸素を発生します。この活性酸素により大腸がんのリスクが高くなります。
④加工肉の過剰摂取により、悪玉菌と反応して有害な代謝物を作ることにより、腸内細菌の多様性の低下を来したり、腸内の慢性的な炎症を起こしたりして腸漏れの原因にな理、大腸がんのリスクが高くなります。
それでは、日本人って平均でどれくらい加工肉を食べてるんでしょうか?
実は日本人は、1日平均13g程度しか食べてないんです。意外に少ないですよね。
ちなみに米国は、日本の2~4倍もの加工肉を食べていると言われています。
「なんだ、1日平均13gなら、全然大腸がんのリスクはないな」
と思っている方、考えを少し改めた方が良いかもしれない論文報告が発表されました。
2025年7月に発表された論文報告です。
この論文の面白いところは、
世界中の77件以上の研究データの結果を統合して、加工肉の暴露量とリスクの関係を低く見積もってみても、なお健康への影響が確認されたというところなんですよね。
Demewoz Haile,et al,” Health effects associated with consumption of processed meat, sugar-sweetened beverages and trans fatty acids: a Burden of Proof study.” Nature medicine. 2025 Jul;31(7);2244-2254.
毎日どれくらいの加工肉を摂取すると、大腸がんのリスクが上昇するかについては様々な論文があり、2015年から現在まで一定の見解がないのが現状だったのですが、加工肉に関する世界中の研究データをかき集めて発表されたのがこの論文です。
簡単に結論から言いましょう。
加工肉を、毎日少ない量(0.6gから57g)摂取しても、大腸がんのリスクが7%以上、さらには2型糖尿病のリスクが11%以上上昇することがわかりました。
そしてこれがこの論文のキモなのですが、
加工肉の摂取量が増えれば増えるほど大腸がんのリスクが増えるのは誰でも分かると思うのですが、
全く加工肉を食べていない状態(ゼロ)から微量でも加工肉を摂取するケースが、リスク上昇の度合いが一番大きかったんです。
これは、ちょっとでも加工肉を食べるだけで大腸がんのリスクが上がっていくことを意味します。
ただし、この論文は、食事調査の多くが自己申告の質問票によるものであり、精度がどの程度なのかという問題があり、因果関係の証明となると、科学的根拠としての強度は弱いと思います。
衝撃的な結果ですが、そもそも加工肉の摂取を完全にゼロにするのってなかなか難しいです。
ですから、個人的には、毎日摂取しないように気をつけると良いのではないかと思います。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。