おはようございます。医師の秋山です。
大阪大学の坂口志文先生がノーベル生理学・医学賞を受賞されました!おめでとうございます!

この一報を聞いた時は、我が事のように嬉しかったのと同時に
「やっと受賞されたんだ」
という安堵にも似たような気持ちになりました。
坂口先生は今回、「制御性T細胞の研究」の功績によりノーベル賞を受賞されました。
制御性T細胞とは、ヒトの免疫力を調整する細胞です。漫画の「はたらく細胞」でも登場しますよね。
免疫力は強過ぎると自分を攻撃してしまいますし、弱過ぎると病気から身をまもることができません。
この強過ぎず、弱過ぎずのちょうどいい免疫のバランスを保っているのが制御性T細胞なんです。
現在、制御性T細胞は、新たな抗がん剤である免疫チェックポイント阻害薬で利用されるようになっています。臨床現場でも使われるようになってきたんですね。
実はこの制御性T細胞は、ここ最近発見された細胞ではありません。
坂口先生は、1982年にはすでにこの制御性T細胞の概念を論文で発表されています。
実は私も、2007年から大学院に入学し、4年間みっちりと制御性T細胞の研究を行っていました。
当時私が大学院に入った時は、制御性T細胞が免疫学のトレンドであり、研究者がこぞって制御性T細胞とあらゆる病気との関係について研究していたのを覚えています。
私も坂口先生の論文を何度も何度も読んで勉強しました。
制御性T細胞は本当に面白いです。
わかりやすい例でお話をすると、妊婦さんってお腹の中に赤ちゃんがいますよね。
妊婦さんにとってお腹の中の赤ちゃんって免疫学的には異物ということになります。
ヒトは、体内に異物が入ると免疫細胞がその異物を攻撃するようになっています。
それなのにお腹の赤ちゃんは免疫細胞で攻撃されないどころか、どんどん大きくなっていきます。不思議だと思いませんか?
実は、妊婦さんは体内の制御性T細胞が増殖していると言われています。
制御性T細胞が増殖することで、免疫力がグッと抑えられるんです。
そうすることで免疫細胞が赤ちゃんを攻撃しないようにしてるんですね。
話が少し脱線してしまいました。制御性T細胞についてもっと語りたいのですがこの辺りにしたいと思います。
話を坂口先生に戻しますが、つまりは、坂口先生は制御性T細胞を発見されてから40年以上経ってノーベル賞を受賞されたことになりますね。
50歳からアンパンマンを描き始め、有名になったのが69歳の時であった作者のやなせたかしさんは
「生きるって、満員電車に乗ることみたいなものです。満員電車でも我慢してずっと降りずにいれば、ある時席は空くんです。僕なんて終点近くでやっと座った。」
といった名言を残されています。
坂口先生もまさにこの境地ではないでしょうか。
まさに継続は力なりですね。私もコツコツと自分ができることをやっていきたいと思います。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。