おはようございます。
今回は逆流性食道炎シリーズの第3回です。
診察中に患者様から「どうして食道に胃酸が逆流するといけないのですか?」という質問を受けることがあります。そこで今回はその理由についてお話したいと思います。
結論から言うと、食道に胃酸が逆流すると食道の粘膜に炎症(ただれやびらん)が生じる逆流性食道炎の原因となるからです。
どうして食道に胃酸が逆流すると炎症が起こるかについて少し詳しく話したいと思います。
理科の実験の時に、pH(ペーハー)って聞いた記憶はありませんか?
pHとはある液体が酸性なのか、アルカリ性なのかをあらわすもので、その液体の性質をあらわす単位です。
pHは0~14までの数値で表され、真ん中のpH7が中性、それより小さい(pH0~6)と酸性、大きい(pH8~14)とアルカリ性となります。
胃液に含まれる胃酸は、pH1~2の酸性の液体で鉄も溶かすことが出来るほどの非常に強い酸性です。
こんなに強い酸が出て胃は大丈夫なの!?って思ってしまいませんか?
安心して下さい。問題ありません(笑)
胃は口をとおして外の世界とつながっているため、食事とともに細菌やウイルスなど身体に良くないものも一緒に胃内に入ってきてしまいます。
胃酸は食事の成分のうちのタンパク質を消化するとともに、体内に入ってきたウイルスや細菌を殺菌して身体を感染から守る働きもしています。
ちょっと待って!!胃酸はタンパク質を消化するなら胃も消化するんじゃないの?って疑問をもった方はいませんか?
くり返しになりますが、安心して下さい。問題ありません(笑)
胃の内側の胃壁は粘液で覆われており、胃酸で胃が溶けないように守られています。
一方で食道は口から摂った食事を胃まで運ぶ筒状の臓器です。通常、固形の食べ物は5秒程度で、液体は1秒程度で食道を通過し、胃まで到達します。
食道を通過する時間は非常に短いため、食道は胃のようにウイルスや細菌を殺菌したり、食事を消化する時間はありません。
このため、食道は消化液を出す必要もないし、消化液から身を守る手段も持ってなく、食べ物を通すためだけの黒子の働きに徹しています。
そんな食道にとって、pH1~2の強酸である胃酸が逆流してくることは完全に想定外です。
胃と違って粘液という鎧をまとっていない裸の状態なので、胃酸が食道に逆流するとその影響をモロに受け、びらんやただれ等の炎症が生じ逆流性食道炎を起こします。
特に食道と胃のつなぎ目である食道胃接合部は、一番胃酸が逆流しやすく、胃酸と長く触れる場所であるため、一番炎症を起こしやすい場所になります。
いかがだったでしょうか?胃酸が食道に逆流したらいけない理由が少しでも皆さんに伝わっていれば幸いです。
これらの症状でお悩みの方は、是非、一度ご相談ください。