おはようございます。
前回、診療中にピロリ菌の感染時期・感染経路について患者さんから良くある質問に関してお話しました。
今回は、ピロリ菌の除菌治療の効果に関して患者さんから良くある質問についてお話ししたいと思います。
【よくある質問1】
ピロリ菌の除菌後は胃がんにならなくなりますか?
回答:
ピロリ菌の除菌後は胃がんの発生するリスクは低下しますが、残念ながら除菌治療後も胃がんは発生する可能性はあります。
過去の研究によると、未感染の人に対してピロリ菌感染が継続している人の胃がんの発生リスクは15~20倍も高くなると言われています。除菌治療を行うとこのリスクがどれぐらい低下するかというと、除菌後の胃がん発生リスクは除菌治療前のリスクの0.6倍程度になると報告されています。
大まかに考えると未感染の人に対して除菌後の胃がんの発生リスクは依然として約10倍程度高い状況が継続します。
【よくある質問2】
ピロリ菌除菌後も胃がんの発生リスクが高いのであれば、除菌治療を行う意味はあまりないのですか?
回答:
除菌治療を行うのは非常に大切です。
除菌治療は胃がんの発生リスクを2/3程度しか下げられませんが、胃がんの中で最も悪性度が高く、早期発見も難しいびまん性胃がん(スキルス胃がん)の予防が出来ると考えられています。
除菌治療後に出現する胃がんの多くは、腸型胃がんと言われる悪性度があまり高くない胃がんのため、除菌治療後に年1回胃カメラ検査を受けていれば、根治可能な状況で早期発見できる可能性が高いと考えられています。
【よくある質問3】
除菌後に胃がんを予防する方法はありますか?
回答:
残念ながら、ピロリ菌の除菌治療以外に胃がんの発生を予防する効果的な方法はありません。
ピロリ菌以外の胃がんの発生リスクを高めるものとして、喫煙、野菜・果物の摂取不足、塩分摂取の関連が報告されていますが、実際にはこれらのリスク因子の改善による胃がんの発生の予防効果は証明されていません。
ピロリ菌除菌後も胃がん発生のリスクは、依然として高い状況は続きますが、定期的に胃カメラ検査を受けていれば、運悪く胃がんが発生しても早期発見できるため、完治できる可能性が高くなります。
ピロリ菌除菌後は、必ず年1回は胃カメラ検査を受けるようにしましょう。
如何だったでしょうか?
ピロリ菌に関する皆さんの疑問が少しでも解消されれば幸いです。
私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。