福岡天神内視鏡クリニックブログ

アルコールと脂肪肝の関係について

おはようございます。医師の秋山です。

 

今回は、アルコールと脂肪肝の関係について解説します。

 

まずは脂肪肝の解説です。

 

脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が溜まった状態のことです。

脂肪肝の人は非常に多く、健康診断を受けた成人の約30%の方が脂肪肝を指摘されています。

ちなみに当院で1年間にエコー検査を受けた患者さんのうち、なんと約50%が脂肪肝でした。結構多いですよね。

 

そもそも、健康的な肝臓での脂肪の占める割合は5%未満です。これが5%を超えてくると、いわゆる「脂肪肝」となります。ただ、エコーやCTなどの画像診断で脂肪肝と診断されるには、肝臓内に20%以上の脂肪沈着が必要となると言われています。

 

教科書的には、アルコールを毎日60g以上飲むと、アルコール性脂肪肝になると言われていますが、私の経験としては、毎日30g(缶ビール2本)以上飲んでいたらまずは脂肪肝になるという印象です。

それではアルコールによる脂肪肝のメカニズムですが

 

アルコールが体内に入ると、

①中性脂肪の原料である脂肪酸がたくさん作られ、その後中性脂肪が合成されて肝臓に蓄積されていく。

②肝臓で酵素が働いてアルコールを「アセトアルデヒド」に分解。多量に飲酒すると「アセトアルデヒド」が大量に作られ、これが肝細胞を痛めつける。さらに中性脂肪を分解する酵素の働きを抑えるので脂肪の分解を抑制する。

以上によりアルコールは肝臓に中性脂肪の蓄積を促すんですね。

 

アルコール性脂肪肝は自覚症状がないため、自分では分かりません。

ただし、アルコール性脂肪肝の段階で、禁酒することができれば元の健康な肝臓に戻ります。

 

しかしながら飲酒を続けていると、飲酒量や期間にもよるのですが、約20%の人がアルコール性肝炎に移行します。ここまでくるとアルコール依存症レベルがほとんどです。

アルコール性肝炎までなれば様々な症状が出てきます。全身倦怠感、食欲不振、腹痛、黄疸など・・・怖いですよね。

 

そして、アルコール性肝炎まで進行すると、禁酒してもなかなか元に戻ることができず、だんだんと肝硬変に移行していきます。

 

アルコール性肝硬変にまでなれば、臨床経験として、まずは普通の生活はできないです。

体は動かず、お腹に水は溜まり、それでも飲酒はしてしまう・・・という悪循環。

 

そしてそのうち肝不全で亡くなってしまうか、肝臓がんができて治療できずに亡くなってしまうという不幸な経過を辿ってしまいます。

 

治療法としては

・とにかくまずは禁酒!これに限ります。

・次に食事療法

→バランスの良い食事を取り、過剰なカロリーを摂りすぎないことです。

・最後に運動療法

→1日30~40分、週3~4回の有酸素運動をすることにより、脂肪肝が改善することが分かっています。

理想は7%程度の体重減少ですが、体重が減らなくても運動療法は効果があるとのことです。

極端な話をすると、食事療法なしでも運動療法単独でも効果があります。

 

つまり、食事療法よりも運動療法の方が効果的であるため、運動療法は必ず取り入れましょう。

 

いかがでしょうか。普段から晩酌される方は、一度腹部エコー検査を受けることをお勧めします。

 

それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。