福岡天神内視鏡クリニックブログ

大腸がんも細菌が原因か?あのニュースを解説します。

おはようございます。医師の秋山です。

 

先週、ついにYouTubeの「内視鏡チャンネル」が、チャンネル登録者数30万人を突破しました。

今年の目標としていた数字ですので嬉しいです。

次は50万人目指してコツコツと動画を上げていきたいと思います。

 

さて、ちょっと前に以下のようなニュースが出てました。

 

「日本の大腸がんの5割 腸内細菌の毒素が原因か」

このニュースについてどう思われますか?という意見がコメントや診察中に聞かれることがありましたので、ここで解説したいと思います!

まずはこのニュースの概要を解説すると、

 

日本の国立がんセンターを含む国際共同研究チームが、日本を含む世界11カ国の大腸がん患者981人のがん細胞の遺伝子変異を分析したところ、日本人の大腸がん患者の50%で、一部の大腸菌などが出す毒素である「コリバクチン毒素」による特有の遺伝子変異が確認されたとのことでした。

Díaz-Gay, M.,et al.“Geographic and age variations in mutational processes in colorectal cancer. ”Nature, 23 April 2025

 

Natureという権威ある雑誌での報告になります。

 

ちなみに、他の国の大腸がん患者の「コリバクチン毒素」による遺伝子変異は19%で確認されたとのことですから、日本人だけが異常に多いということになりますね。

 

さらに、この遺伝子変異ですが、年代別に比較してみると、高齢になるに伴って低くなる傾向があるとのとで、50歳未満のいわゆる若年世代の大腸がんに関係している可能性があるのではないか?とのことでした。

 

疑問点はたくさんあります。

・なぜ日本人だけ「コリバクチン毒素」による遺伝子変異が多いのか?

・なぜ若年世代の大腸がんにより関係しているのか?

・どの程度の量のコリバクチン毒素に暴露され、どのくらいの期間暴露されると大腸がんになるのか?

などでしょうかね。おそらくこれからさらに研究され、これらの疑問点が解明されていくのではないかと思います。

 

でも非常に面白い論文ですよね。

「胃がんのほとんどがヘリコバクター・ピロリ菌が原因で発症するということが周知の事実であり、それなら同じ消化管である大腸がんも原因菌が存在するのではないか?」

と考える研究者は沢山いたと思うんですよね。それが今回このような形となって発表されたということになります。

 

将来的に、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法のように、コリバクチン毒素産生菌の除菌療法みたいな治療法が確立され、それが大腸がんの予防になる、というようなことになるかもしれませんね。

まだまだ分かっていない点はありますが、それでは、コリバクチン毒素を産生するような菌を増やさないためにはどうしたらいいのでしょうか?

 

最近発表された論文ですが、食物繊維をしっかりと摂ると、コリバクチン毒素産生菌が減るという報告があります。

Bhupesh Kumar Thakur, et al,“Dietary fibre counters the oncogenic potential of colibactin-producing Escherichia coli in colorectal cancer” nature microbiology, 2025 Apr;10(4):855-870

 

その他、コリバクチン毒素産生菌を減らす生活習慣として、

・赤身肉やハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉を食べ過ぎない

・適度な運動を定期的に行うこと

などが挙げられています。

やはり鍵は、腸内環境を保つことではないでしょうかね。

 

普段からしっかりと腸活している方は恐るに足らずではないかと思いますので、引き続き腸活を続けていきましょう!

 

それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。