おはようございます。医師の秋山です。
今回は、抗生物質と腸内環境の話です。
普段の生活で風邪を引いた時や腸炎になった時、抗生物質を飲んだことがある経験ってあるのではないかと思います。

抗生物質は、細菌を叩く薬ですよね。体の中で悪さをしている菌を叩くために抗生物質を使うのですが、腸に棲みついている腸内細菌にまで影響を及ぼしてしまうんです。
今回はこの抗生物質について、どんな種類をどのくらいの期間飲むと、どれくらい腸内環境に影響を及ぼすのかについて解説したいと思います。
以前、腸内細菌に影響を及ぼすトップ3は
1位薬剤、2位加齢、3位食事
という話をしたと思います。
しかも、加齢や食事は比較的長い期間を経て腸内フローラに影響を及ぼしてきますが、薬剤は、短い期間で腸内細菌に影響を及ぼすこともあるので要注意でしたね。
さらに、薬剤は加齢や食事などと比べると、なんと約3倍も腸内フローラに影響を及ぼしやすいと言われています。
Nagata N. et al, “Population-level metagenomics uncovers distinct effects of multiple medications on the human gut microbiome” Gastroenterology 163, 2022,1038–1052 .
薬ってやはり良くも悪くも体に影響を及ぼすことがよく分かりますね。
そして最近発表された論文報告です。
Baldanzi G,et al,” Antibiotic use and gut microbiome composition links from individual-level prescription data of 14,979 individuals” Nat Med, 2026Mar11.
スウェーデンで抗生物質を投与された、14,979人の患者さんの便を経時的に採取して、腸内細菌がどのように影響を受けているのかを調べてます。
結果ですが、一部の抗生物質で、
①腸内細菌の多様性が大きく低下
②肥満、高脂血症、糖尿病のリスクを上げる悪玉菌が増える
という結果でした。
一部の抗生物質ですが、クリンダマイシン、フルオロキノロン、フルクロキサシリンとのことです。
この中で日本でもお馴染みである薬が、クリンダマイシンの仲間であるダラシン、フルオロキノロンの仲間であるクラビットですね。特にクラビットはよく処方される抗生物質です。
そしてこの論文では、1コースでも抗生物質を使用すると、先ほどのような腸内環境の変化が起こってくるとのことでした。
1コースというのが、医師が患者さんに一度に処方する分を1コースと定義しているようです。
大体、我々医師は1回の処方で抗生物質を3日〜7日ほど処方するケースがほとんどですから、数日抗生物質を飲んだだけで腸内環境に影響を及ぼすということになります。怖いですよね。
そして先ほどあげた腸内環境の悪化がどれくらい続くのかですが、抗生物質を内服後の1年間が一番強く影響を受けており、そこから徐々に回復してきますが、完全に回復するのに数年かかってます。中には8年もかかっているケースもありました。
たかだか数日抗生物質を飲んだだけでそこまで長期間もの腸内環境に影響を及ぼすとはちょっと驚きですよね。
そしてこの抗生物質による腸内環境へのダメージは、抗生物質を飲む回数が多くなると、それだけダメージが蓄積され、元に戻るのに時間がかかるとのことでした。場合によっては、完全に元に戻らない不可逆的な変化となるケースもあるとのことです。
いかがだったでしょうか。抗生物質は市販されていませんので、抗生物質の安易な処方による乱用は、我々医師の責任になります。気をつけないといけません。
以上、抗生物質と腸内環境の話でした。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。