おはようございます、医師の秋山です。
一昨日、「尿を調べてがん発見 実証実験へ」という記事がNHK首都圏ニュースで放映されました。
もともと日立製作所が3年前に尿の研究を開始し、名古屋大学医学部付属病院が共同で実証実験を行うことになったようです。「尿でがんを発見する」という実証実験は、世界で初めてになります。
”尿”には多くの老廃物が含まれていますが、この尿の2000種類の老廃物のうち、がん患者に特有の傾向を示す数種類の物質が発見されているようです。この物質があるかないかでがんの疑いがあるかどうかを判定するのです。
このスクリーニング検査のメリットとしては、採血と比較すると「痛みがない」こと。さらに「自宅で自ら採取できる」ことがあります。
便検査と比較すると「便を出さなければいけないプレッシャーやストレスがない」こと、「お尻が切れただけの無駄な”擬陽性”を減らせる」ことが挙げられます。
早ければこの尿検査は、2020年代前半にも実用化されるとのことです。
尿検査だけであれば侵襲性が少なく、そして実証実験によって検査の高い精度が認められたならば、スクリーニング検査として非常に有用であると思います(早期がんの発見にも寄与する可能性も報告されています)。
少なくとも、「早期がん発見の役に立たない」現行の腫瘍マーカー採血や便潜血検査は淘汰されていくでしょう。
尿で「がんの疑いがある」と診断されたならば、より精度の高い胃カメラ・大腸内視鏡検査・胸腹部CT・脳MRIなどを受けていくのがよいと思います。
医療技術の進歩は目覚ましいものがあり、胃カメラ・大腸内視鏡で早期がんの治療もできる時代となりました。
「大腸がんは予防が可能、かつ早期であれば内視鏡治療が可能」であり、「胃がんは早期発見により完全治癒が可能」ですので、まずは内視鏡検査を受けていきましょう!
「2人のうち1人ががんに罹り、3人に1人ががんで亡くなる時代」
と言われ、これだけ聞くと将来が不安な気持ちになるかもしれません。
しかし見方(捉え方)を変えれば、
「10人に5人はがんに罹るが、そのうちの3人はがんでは死なない」
ともいえます。がんを早期で発見できれば早期治療が可能となり、がんで亡くなる確率を下げていくことが可能になります。
「尿検査でのがん発見の可能性」、実用化されるといいなと思っています(^^)。
採血検査は、コレステロール・血糖値などの測定に有用で、脳卒中や心筋梗塞などの心血管系疾患のリスクを知ることができる大切な検査です。
腫瘍マーカー採血は残念ながら前立腺がんを除き、早期がんの発見にほとんど寄与しません。
各々の検査に得意・不得意分野があることを知って、検査を受けていただくことをおススメいたします。