福岡天神内視鏡クリニックブログ

過敏性腸症候群の治療について

おはようございます。
前回、下部消化管の機能性疾患である過敏性腸症候群(以下IBS)がどんな疾患なのかについてお話しました。今回は、その治療に関してお話します。

IBSは腸自体に炎症や腫瘍などの異常が存在する病気ではありません。
仕事や学校が無い休日や楽しいことや好きなことをしているときは症状が普段より軽いという経験はありませんか?
逆に休み明けや試験や大事な仕事の前になると症状が強くなるという経験はありませんか?

IBSは心と体のバランスが上手くとれていないことで起こる疾患です。このため、一番の原因であるストレスや不安を取り除くことなく、症状を完全に無くす事が出来る根本的な治療は残念ながら存在しません。
一般的には次の様なアプローチで症状の軽減を目指します。

① 食事指導
食物繊維をしっかり摂取し、高FODMAP食の摂取を控えます。
【FODMAPとは?】
Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(2糖類)、Monosaccharides(単糖類)and Polyols(ポリオール:ソルビトール、マンニトール、キシリトール)の略です。腸内で発酵し吸収されにくくなる4種類の糖類をまとめてFODMAPといいます。この糖類をたくさん含む食事が高FODMAP食です。FODMAPは小腸で吸収されにくいため、小腸内の糖質濃度が高くなります。その結果、水分が小腸内に引き込まれて下痢や腹痛を誘発したり、大腸内でガスが発生して腹部膨満を感じさせます。

② 生活指導
ストレスや不安の原因を把握し、その軽減を行います。しっかり睡眠を取るのも重要です。入眠前の2時間はスマホをいじったりするのは止めましょう。脳が興奮し良好な入眠が出来なくなります。

③ 薬物治療
腸内環境を整える整腸剤や便の形を調節する薬を服用し、症状の緩和を目指します。

 

生活習慣の見直しを行わず、薬だけで治療を行っても症状は改善しません。まずは、自身が感じている潜在的なストレスの把握と生活習慣の見直しを行い、対症療法でサポートしていきましょう。ストレスや不安に対する治療は、心療内科的なアプローチが必要となります。

IBSは炎症や腫瘍など症状の原因となる器質的疾患が無いことが診断の大前提です。血便や発熱、体重減少、異常な身体所見がある場合、また50歳以上の患者さんや過去に大腸の病気にかかったり、家族にそうした方がいるなどの危険因子がある患者さんは、IBS以外の疾患である可能性が高く要注意です。
いずれにしても便通異常がある場合は、まずは内視鏡検査で器質的疾患の有無を確認することをお勧め致します。一度お気軽にご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。