福岡天神内視鏡クリニックブログ

便秘を考察する その23 下剤の功罪4 便秘と内臓感覚障害

おはようございます。

前回、刺激性下剤は、精神的な依存性を引き起こす恐れがあることをお話しましたが、下剤依存症の人が抱える最も大きな問題は精神的な依存性だけで無く、便意が消失してしまうことです。

今回はいわゆる刺激性下剤による便意の消失と内臓感覚障害についてお話します。

 

 

下剤の連用による便意の消失は、身体が自然な排便を忘れたサインです。

この状態になると、様々な生活習慣の改善などを行っても排便力の改善は難しくなります。

便意の低下は、下剤服用の頻度、下剤の服用量、下剤の服用期間に比例して低下していきます

 

 

健康な人は、S状結腸に便がある程度溜まると、腸の内圧が高まり、便が一気に直腸に押し出されます。

便が直腸に押し出される際に直腸壁が刺激されると、直腸反射が起こると同時に便意を感じ、肛門括約筋がゆるむと排便が起こります。

とはいえ、便意を感じてすぐ排便が起こると漏らしてしまうため、肛門括約筋のうち自分の意思で動かすことができる外肛門括約筋を調整してトイレに行くまで自分の意思である程度排便はコントロールすることが出来るようになっています。

 

 

一方、刺激性下剤により便意が消失してしまった人は、S状結腸から直腸に便が押し出されてもその刺激が脳に伝わらないため、便意が生じません

このため、どんどん便が溜まり、腹部膨満感や腹痛が生じてしまいます

この状態を回避するために、排便が得られるまでまた下剤を服用してしまうという悪循環に陥ってしまうのです。

 

 

ところで便意とは何でしょうか?

人は外からの刺激を視覚、聴覚、嗅覚、味覚、平衡感覚を通して感じ取り様々な情報を自覚しています。

心臓や肺、胃や腸などの内臓もこれらの感覚と同様に外からの刺激を感じ取って臓器の機能を調整しています。

この内臓が感じ取る感覚を内臓感覚と言い、腹痛などの内臓痛や圧迫感、食欲、空腹感、吐き気、尿意、性感覚などがあります。

便意はこの内臓感覚の一種です。

 

 

これらの内臓感覚は求心性神経を介して脳に情報を伝え、私たちが「空腹→ごはんを食べる」「尿意・便意→トイレに行く」といって行動を起こすことに繋がります。

内臓感覚は、このように人が行動を起こすための情報を脳に伝えるだけでなく、自律神経(体温の調節や心臓の動きなど自分の意思と関係なく体の機能を調節する神経)や細菌・ウイルスなどから体を守る免疫機能にも影響を及ぼすと言われています。

このため内臓感覚が乱れると汗をかいたり、血圧が下がったりなどの自律神経症状が出現し易くなり、体調も不調になりやすくなります

便意の消失は、この内臓感覚の障害の一種であるため、ただ単に便秘を起こすだけで無く、継続することで様々体調不良に繋がります。

 

 

下剤を服用することで得られる排便は、便秘が治っているわけではありません

あくまでもクスリの力で強制排便させているだけです

これを続けていると、便意の消失をきたし、将来的に便秘を確実に悪化させます

便を毎日出すことにとらわれて毎日下剤を連用することは止めましょう。

 

ただし、どうしても便が出せずに苦しいときにたまに服用して便を出すのは問題ありません。

下剤は、あくまでも急場の対処法として一時的に服用するだけにとどめましょう。

 

 

便秘の多くは、慢性的な水分摂取不足、運動不足、食事や生活のリズムの乱れが原因です。

当てはまることはありませんか?

安易にクスリに頼るのでは無く、まずは、自身の生活習慣を見直してみましょう。

 

 

次回は内臓感覚の低下のセルフチェックの方法についてお話ししたいと思います。

お悩みの方は、是非一度、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。