おはようございます。
前回、胃炎の京都分類でピロリ菌感染の状態、胃癌リスクを評価するのに用いられる実際の胃炎の内視鏡所見のうち、胃がんの発生リスクが高いと考えられている「腸上皮化生」についてお話ししました。
今回は、ピロリ菌感染胃炎の中でもこの内視鏡所見があると、ピロリ菌の現感染(現在も胃にピロリ菌感染が継続している状態)があると考えられる「びまん性発赤」についてお話ししたいと思います。
びまん性発赤は、主に胃体部(胃の入り口付近の噴門部と胃の出口付近の幽門部を除く胃全体)の非萎縮性粘膜に観察される連続的な拡がりを持った均等な発赤調粘膜です。
びまん性発赤は、ピロリ菌の現感染がある胃に認められる所見ですが、ピロリ菌感染により粘膜萎縮を来した部位では無く、まだ、萎縮を起こしていない部位である非萎縮性粘膜に認められるのが特徴です。
びまん性発赤は、ピロリ菌の現感染があるヘリコバクター・ピロリ感染性胃炎の基本所見で、ピロリ菌感染により胃に引き起こされる好中球浸潤や単核球浸潤といった炎症の程度と相関すると考えられている所見です。
このため、ピロリ菌の除菌治療を行い、除菌が成功すると炎症が改善して行くにつれて、このびまん性発赤も消失・軽減していきます。
その変化は、除菌後3ヶ月程度の比較的短期間でも内視鏡検査をすると、確認出来るといわれているぐらい、胃の炎症の程度と鋭敏に相関しています。
図.胃体部大彎にみられたびまん性発赤
a:除菌前
b:除菌後
除菌前は、胃体部大彎の視野全域に認められたびまん性発赤がピロリ除菌後は消失している
春間賢.胃炎の京都分類.日本メディカルセンター,2014より転載
ピロリ菌感染歴の短い若い人などの場合は、ピロリ菌感染による粘膜萎縮などの変化が乏しいケースも多く、このような場合、胃体部のびまん性発赤の有無をしっかり評価することで、ピロリ菌の現感染を見逃すことなく評価することが可能となります。
このように胃炎の京都分類で定義されている胃炎の内視鏡所見は、ピロリ菌感染の状態、胃がんスクを評価する上で、私たち消化器内視鏡専門医にとって非常に重要な所見です。
私たち消化器内視鏡専門医は、これらの所見を一つずつ丁寧に拾い上げて、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。
難しいお話しだったと思いますが、私たち消化器内視鏡専門医は、これらの所見を見落とすこと無く、拾い上げて胃カメラ検査時に患者様一人一人のピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクを推測し、必要な内視鏡検査のフォローアップのタイミングを提案したりしています。
私たち消化器内視鏡専門医は日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。
ご不明な点がありましたら、ご相談ください。