福岡天神内視鏡クリニックブログ

ウイルス性腸炎について

おはようございます。

前回は私たち医師が感染性腸炎を疑う患者さんに遭遇したときに、まずその炎症が起きている場所が小腸がメインなのか、大腸がメインなのかを考えながら問診や診察を行っていくというお話しをしました。感染している主な場所が小腸なのか、大腸なのかで原因がウイルスによるものなのか細菌によるものなのかをある程度絞ることが出来るからです(もちろん、オーバーラップすることもあるため、完全ではありません)。

 

平成30年の食中毒統計によるデータですが、感染性腸炎の原因として最も多いのは、ノロウイルス(全体の49%)と報告されています。その他のウイルス性腸炎の原因として多いのは、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどになります。
実は、このウイルス性腸炎は、小腸をメインに感染を起こします。

 

このウイルスによる小腸型感染性腸炎は、臍を中心とした広範囲に腹痛を認めますが、ウイルス自体が腸管粘膜を傷害しないため、強い炎症は起こしません。このため、腹痛は強くないのが特徴です。また、炎症はエンテロトキシンという毒素が原因で上述のように腸管粘膜の組織傷害を伴わないため、発熱は無いか、あっても微熱程度です。
エンテロトキシンという毒素は分泌性の下痢を起こすため、水様性で量が多い下痢を起こします。さらに、嘔気・嘔吐を伴うというのも特徴です。

 

大人のウイルス腸炎は自然治癒することが多いため、下痢による脱水や吐き気といった症状を緩和する治療である対症療法が治療の中心となります。下痢止めや抗生剤といった薬での治療は不要です。
また、ウイルス性腸炎では、腸に強い炎症が無いため基本的に食事制限は不要です。消化が良い物を取れる範囲で少しずつ摂りましょう。また、経口補液などの糖分と電解質を含んだ水分も摂りましょう。

 

吐き気が強く、水分や食事が取れない場合は、点滴が必要になります。この場合は、病院を受診しましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。