福岡天神内視鏡クリニックブログ

逆流性食道炎を考察する その24 逆流性食道炎とカリウムイオン競合型アシッドブロッカー

おはようございます。

逆流性食道炎シリーズ第24回です。

今回は逆流性食道炎の治療に用いられる最も強力な新薬についてお話しします。

 

 

逆流性食道炎は、食道に胃酸が逆流することで起こる病気です。

このため、薬物治療の中心は逆流する胃酸の量を減らすことで、前回までにお話ししたプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカーが用いられます。

 

 

ここに2014年から新しく使用できるようになった新薬が加わりました。

この薬は、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB:Potassium-Competitive Acid Blocker)と言います。

P-CABは現在、日本で使用できる胃酸分泌抑制薬の中で最も強力な薬です。

 

 

逆流性食道炎で最も処方されている胃酸分泌抑制薬はPPIですが、効果発現に即効性はなく、服用開始から十分な効果を発揮するまでに少なくとも3~5日間かかると言われています。

また、PPIは効果に個人差があります

このようなPPIの欠点を克服した新薬がP-CABです。

 

胃酸は、アセチルコリンやヒスタミンという化学物質とガストリンというホルモンが胃粘膜の壁細胞にある受容体に結合すると胃壁細胞膜上に存在しているプロトンポンプというタンパク質から分泌されます。

PPIはこの胃酸分泌の製造元にあたるプロトンポンプに結合し、プロトンポンプ自体をブロックすることで胃酸の分泌を抑制します。

一方、P-CABはプロトンポンプが作用する際に必要な鍵となるカリウムイオンをブロックしてプロトンポンプを働けなくすることで胃酸の分泌を抑制します。

 

 

難しいですね。

適切な例えではないかもしれませんが、プロトンポンプをクルマに例えると、PPIはクルマ自体が動けないように改造するものであるのに対し、P-CABはクルマに給油出来ないようにして動けなくするイメージです。

 

P-CABの方がプロトンポンプの働きをブロックしやすいため、効果発現までの時間が短く3時間ほどで効果が出現し、その効果は24時間持続します。

また、PPIが苦手とした夜間の酸分泌も抑制します。

さらに、薬を分解する代謝酵素は個人差が少ないため、効果の現れ方も個人差が少ないのが特徴です。

 

 

P-CABは、逆流性食道炎に対して非常に有効な新しいクスリですが、PPIと同様に長期投与には懸念される副作用があります

胃酸分泌は強力に抑えすぎると、腸内細菌叢のバランスが変わるため、下痢などのお腹の不調が出現しやすくなります。

P-CABはPPIよりも更に強力に胃酸分泌を抑えるため、腸内細菌叢の変化による影響が出やすいと考えられています。

新しい薬のため、まだ長期的な副作用の影響ははっきり分かっていませんが、その強力な酸分泌抑制効果からPPIで報告されている骨折や骨粗鬆症のリスク、ミネラルの吸収障害やそれに伴う認知症発症や不整脈などのリスクも懸念されています。

 

 

逆流性食道炎の一番大切な治療は生活習慣改善や食生活の改善などの原因の改善です。

この根本的な原因の改善を行わず、薬による加療だけを行っても効果があまり得られないだけでなく、一時的に効果があったとしても、薬の服用を中止するとすぐに再発してしまいます。

まずは現在の習慣を一度見直してみましょう。

症状でお悩みの場合は、是非一度、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。