おはようございます。
前回、胃炎の京都分類に関してお話しました。
今回からは、胃炎の京都分類でピロリ菌感染の状態、胃癌リスクを評価するのに用いられる実際の胃炎の内視鏡所見についてお話ししたいと思います。
まず今回は、ピロリ菌感染により起こる慢性胃炎である萎縮性胃炎の内視鏡所見である「萎縮」についてお話します。
萎縮には病理学的な萎縮と内視鏡的な萎縮があります。
病理学的な萎縮は、内視鏡検査時に胃粘膜より一部組織を採る生検により調べます。生検により採取した胃粘膜に胃固有腺(胃底腺、幽門腺、噴門腺)の減少が認められた場合、病理学的には萎縮ありと判断されます。
一方、内視鏡的な萎縮は、胃カメラ検査時に術者が胃粘膜の状態を見て評価します。
胃粘膜にピロリ菌感染が起こり、慢性活動性胃炎の状態になると、胃粘膜は徐々に薄くなる菲薄化を起こし、それに伴って胃体部のヒダが消失して、樹枝状の血管透見像やまだらな褪色調の粘膜などを認めるようになります。この所見が粘膜萎縮です。
内視鏡検査時に、この萎縮胃粘膜の進展の程度により、萎縮性胃炎の進行度を評価しますが、この時に用いる基準が木村・竹本分類です。
ピロリ菌感染は、まず最初に胃の出口近くすぐの幽門部の幽門腺粘膜(幽門腺領域)に感染します。
胃にヘリコバクター・ピロリ菌が感染すると、ピロリ菌により胃には持続的な活動性の炎症が引き起こされますが、ピロリ菌感染が継続すると、胃の出口付近から入り口付近に向かってこの活動性炎症が徐々に上に向かって拡がっていきます。
つまり、ピロリ菌の感染は、はじめは幽門腺領域のみに起こりますが、徐々に胃底腺領域へと拡がり、そのまま感染を放置しておくとやがて胃全体に及ぶことになります。
萎縮胃粘膜の進展は、ピロリ菌感染の拡がりとともに起こるため、木村・竹本分類は、当然、この進展を反映した分類となっています。
萎縮胃粘膜の面積の大きさからC-Ⅰ、C-Ⅱ、C-Ⅲ、O-Ⅰ、O-Ⅱ、O-Ⅲの6段階に分類されます。
Cはclose、Oはopenを意味し、噴門部から幽門部まで萎縮が連続してつながっている状態をopen type、つながていない状態をclose typeとして分類しています。open typeの方が萎縮がより進行している状態です。
C-Ⅰ~C-Ⅱが軽度萎縮、C-Ⅲ~O-Ⅰが中等度萎縮、O-Ⅱ~O-Ⅲが高度萎縮状態と考えられます。
図1.木村・竹本分類
胃と腸2019;54(5)612-613より転載
図2.萎縮性胃炎の内視鏡所見と木村・竹本分類
豊島治.内視鏡スクリーニング Practice & Atlas.南江堂,2021より転載
難しいお話しだったと思いますが、私たち消化器内視鏡専門医は、これらの指標を元に胃カメラ検査時に患者様一人一人のピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクを推測し、必要な内視鏡検査のフォローアップのタイミングを提案したりしています。
私たち消化器内視鏡専門医は日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。
ご不明な点がありましたら、ご相談ください。