おはようございます。
前回、刺激性下剤による便意の消失と内臓感覚障害についてお話しましたが、今回は腸の内臓感覚に関連する病気と内臓感覚の低下のセルフチェックの方法についてお話ししたいと思います。
腸の内臓感覚が強すぎるために起こる病気が過敏性腸症候群です。
腸自体には炎症やポリープ、癌などの異常が無いにも関わらず腸の働きが腸の働きが強くなりすぎることにより腹痛や便通異常(下痢、便秘、下痢と便秘を繰り返す混合型)が出現する疾患です。
一方、便秘に対して刺激性下剤を連用した結果、便意を感じることがなくなった状態が腸の内臓感覚が低下している状態です。
特に、大腸カメラを行った際に、上行結腸~S状結腸にかけて腸粘膜に色素沈着がある大腸メラノーシスを認める腸の場合、便意を感じることはほぼなくなった状態になっていると言われています。
刺激性下剤による強制排便を繰り返すと、腸を自力で動かすことが次第に出来なくなるだけでなく、腸の内臓感覚も低下し、便意を感じることが出来なくなり、さらに便秘が悪化するという悪循環につながります。
刺激性下剤の連用を止め、この悪循環を断ち切るためにも現在の腸の内臓感覚の低下の程度を把握することは大切です。
次のチェックリストで、ご自身の現在の腸の状態を評価してみてください。
【腸の内臓感覚低下セルフチェックシート】
1.あまり水分を摂取しない
2.1日に食べる食事は1~2食である
3.お腹がゴロゴロいうことがあまりない
4.下腹部が張る感じが良くある
5.便意(排便したいという感覚)がない
6.下剤を服用しないと便が出ない
7.下剤を1年以上毎日服用している
8.何もしない(下剤や浣腸を使用)と全く便が出ない
9.グリセリン浣腸を使用して排便したことがある
10.排便が無くお腹が張ると胸やけがある
①1~10の全て当てはまらない人
内臓感覚は問題ありません。
便秘で悩んでいても食事や運動などの生活習慣の改善で排便力がつき便秘の改善が期待できます。
②5以外は当てはまる人
内臓感覚に少し問題が出始めています。
内臓感覚を低下させる生活が続いていると考えられます。これまでの食生活や生活習慣を見直し、内臓感覚の低下が重症化するのを防ぐ必要があります。
③5のみ、または5+1~4のどれか2つに当てはまる人
軽症の内臓感覚低下の状態です。
すでに便意が無く、内臓感覚が低下した状態です。刺激性下剤の服用をやめ、マグネシウム製剤や刺激性下剤以外のタイプの坐薬で排便をサポートしながら、便意を取り戻す訓練が必要です。
④5+それ以外の項目が3つ当てはまる人
中等症の内臓感覚低下の状態です。
1~4に当てはまる項目が多い場合は、今すぐ食生活の見直しが必要です。6~10に当てはまる項目が多く体調も悪い場合はかなり重症化しています。
⑤5+それ以外の項目が5つ以上当てはまる人
重症の内臓感覚低下の状態です。
体が自然な便意を忘れてしまっている状態です。特に6~10に当てはまる項目が多い場合は専門医へ相談しましょう。
下剤を服用することで得られる排便は、便秘が治っているわけではありません。
あくまでもクスリの力で強制排便させているだけです。
これを続けていると、便意の消失をきたし、将来的に便秘を確実に悪化させます。
便を毎日出すことにとらわれて毎日下剤を連用することは止めましょう。
ただし、どうしても便が出せずに苦しいときにたまに服用して便を出すのは問題ありません。
下剤は、あくまでも急場の対処法として一時的に服用するだけにとどめましょう。
便秘の多くは、慢性的な水分摂取不足、運動不足、食事や生活のリズムの乱れが原因です。
当てはまることはありませんか?
安易にクスリに頼るのでは無く、まずは、自身の生活習慣を見直してみましょう。
お悩みの方は、是非一度、ご相談ください。