福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その16 胃炎の内視鏡所見10 胃底腺ポリープについて

おはようございます。

 

前回、ピロリ菌の感染のない胃に見られる所見であるRAC(Regular arrangement of collecting venules)についてお話ししました。

今回もピロリ菌感染のない胃に見られることが多い所見の一つである胃底腺ポリープについてお話ししたいと思います。

 

胃底腺ポリープの見た目は、周囲の正常な胃粘膜と同じ色調で表面は平滑でツルツルした印象です。

ヘリコバクター・ピロリ菌に未感染の綺麗な胃粘膜に発生することが多く、胃の胃底腺領域(ひだがある部分)に発生しやすい良性のポリープです。

胃底腺ポリープの多くは、サイズが5mm以下と小さく、経過観察中にサイズが増大したり、逆に縮小したり自然消退することもあるポリープです。多発することも良くあります。

胃底腺ポリープは、男性や若い人でも認めますが、中年女性に認められることが多く、胃底腺ポリープの発生原因は、実はまだ不明ですが、女性に見られることが多いことから女性ホルモンなどの関与が考えられています。

また、逆流性食道炎などの治療に用いる強力な酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI:proton pump inhibitor)を長期間にわたって服用すると胃底腺ポリープが発生したり、増加するという報告もあります。このPPIの長期服用で発生した胃底腺ポリープは、PPIの服用を中止すると縮小、減少すると報告されています。

 

胃底腺ポリープは、ピロリ菌除菌後の胃に発生することもありますが、基本的にはピロリ菌未感染の胃に認めることが多く、がん化のリスクは極めて低い良性のポリープです。

胃カメラ後の説明の際に、「胃にポリープがありましたが、問題ありません。」と医師から言われた場合は、その多くがこの胃底腺ポリープです。

 

胃底腺ポリープそのものは、胃の不快な症状の原因になることはありません。

人間ドックや検診のバリウムによる胃レントゲン検査や胃カメラ検査でたまたま偶然見つかる場合がほとんどです。もちろん、胃痛などの症状があり、胃カメラ検査を受けた際に見つかることもありますが、その場合であってもポリープ以外の胃炎などが症状の原因です。

 

胃底腺ポリープと確定診断するには、胃カメラ検査で直接ポリープの形や表面構造、色調などを観察することが必要です。場合によっては、ポリープの表面の組織を一部とって顕微鏡で病理組織学的に調べます。

 

胃底腺ポリープはがん化のリスクは極めて低い良性のポリープのため、通常は切除などの治療は不要です。

しかし、非常に稀ではありますが、がん化例の報告もあるため、胃底腺ポリープと考えられてもフォローアップは必要です。

経過観察中にどんどんサイズが大きくなった場合や、表面に凹凸不整などが認められる場合は、生検による病理組織診断まで行い、悪性化していないかをチェックする必要があります。

悪性化している場合や細胞異型が出現している場合は、内視鏡での切除が必要となります。

このため、胃カメラ検査などで胃底腺ポリープを指摘された場合は、年に1回は胃カメラ検査を受けて、サイズが大きくなっていないか、表面に凹凸不整などの変化が出てきていないかフォローが必要です。

 

「胃炎の京都分類」で定義されている胃炎の内視鏡所見や胃底腺ポリープの様なピロリ菌未感染の内視鏡所見は、ピロリ菌感染の有無・胃がんリスクを評価する上で、非常に重要な所見です。

私たち消化器内視鏡専門医は、これらの所見を一つずつ丁寧に拾い上げていくことで、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。

 

専門的な難しいお話しですが、私たち消化器内視鏡専門医が、普段どういったところに気をつけながら、検査をしているのかということが少しでも伝われば幸いです。

これらの所見を見落とすこと無く、しっかりと拾い上げて胃カメラ検査時に患者様一人一人のピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクを推測し、必要な内視鏡検査のフォローアップのタイミングを提案していきます。ご不明な点がありましたら、是非一度、ご相談ください。

 

私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。

ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。