こんにちは、医師の中島です。
外来診療では様々な消化器症状についてのお悩みをお聞きしますが、中でも多いものの一つに「おなら」についてのご相談があります。
ガスがよく出る、お腹が張る、臭いが気になる、などのご相談が男女問わず多い印象です。
そこで、意外と気になることが色々ある「おなら」についてのウソ、ホントについてお話していきたいと思います。
①おならのほとんどは腸内細菌が作っている⁈
意外にも、答えはノーです。
おならの大半は飲食時に食べ物と一緒に飲み込んだ空気で、そのうち95%ほどは血液中に再吸収されますが、残りの一部がおならとして肛門から排気されます。
おならの成分を分析した研究によると、その80%ほどは窒素。空気の約78%を占めているのも窒素であり、おならの組成は空気に極めて近いということになります。窒素に続いて多いのは二酸化炭素と水素で、これらは腸内細菌の代謝によって大腸内で作られています。その他に酸素、メタンが含まれています。
参考文献:M D Levitt, J H Bond Jr, Gastroenterology. 1970 Dec; 59 (6) : 921-9.
これらのガスは無味無臭の気体ですが、おならのわずか1%ほどの成分である硫化水素などの揮発性硫黄化合物やインドールなどの揮発性窒素化合物があの強烈な臭いを発しているのです。
そこで、次の疑問。
②おならがクサい人は病気リスクも高い⁈
臭いがきついと腸の中に何か悪いものがありそうで心配です、とよく聞かれます。
臭いの原因である輝発性硫黄化合物や揮発性窒素化合物は、腸内の悪玉菌(大腸菌やウェルシュ菌など)が発生させるものです。
肉や卵などの動物性たんぱく質には硫黄を含むアミノ酸が多く含まれているので、摂りすぎると、それをエサとする悪玉菌が増え、悪臭ガスを発生させることにつながります。
他にはネギ、ニンニク、ニラのように、硫黄成分を含む食べ物を食べると腸管内で臭い成分が発生しやすくなります。
このうち肉類の過食(特に赤身肉や加工肉)には、たしかに大腸癌リスクが潜むとされますが、ネギやニンニクには抗酸化作用など健康にポジティブな働きがあるため、一概に「おならがクサい=病気リスクが高い」と断言するのは難しそうですね。
いかがだったでしょうか。
普段から気になっている「おなら」のことが少しでも解決できたなら幸いです。
週の中日ですね、一息ついて後半もがんばっていきましょう。