おはようございます。医師の秋山です。
さて、今回は、腸内環境=腸内フローラに影響を及ぼすものについて解説したいと思います。
いきなりですがここで問題です。
我々の腸内フローラに一番影響を及ぼすものってなんでしょうか?
次の3つのうちから1つ選びましょう!
①薬剤
②加齢
③食事
ちなみに、この3つは全て腸内フローラに影響を及ぼすものばかりです。
この中でも特に腸内フローラに影響を及ぼすものはどれでしょうか?ということですね。
正解は、
①薬剤
です!
まあ、これはなんとなく分かりますね。
ちなみに、②加齢や③食事は比較的長い時間を経て腸内フローラに影響を及ぼしてきますが、①薬剤は、短い期間で影響を及ぼすものもあるんです!
つまり、良くも悪くも私たちの体に一番影響を及ぼしやすいのが薬なんですね。
実は薬剤は、加齢や食事などと比べると約3倍も腸内フローラに影響を及ぼしやすいと言われています。
(参考文献)Nagata, N. et al, “Population-level metagenomics uncovers distinct effects of multiple medications on the human gut microbiome” Gastroenterology 163, 1038–1052 (2022)
それでは次に疑問が浮かんでくるのが
「薬ってたくさんあるけど、どの薬が腸内フローラに影響を及ぼすんだろ?」
ではないでしょうか。
それでは、腸内フローラに影響を及ぼす薬剤ベスト3を発表します!
1位:消化器疾患治療薬
2位:糖尿病薬
3位:抗生物質
となっています。
うーん、個人的には1位は抗生物質と思っていたのですが、なんと消化器疾患治療薬が1位なんですね。
それではこの消化器疾患治療薬って具体的にはどんな薬でしょうか?
代表的なものは、胃酸分泌抑制薬です。具体的には、ガスター、ネキシウム、タケキャブなどが有名ですね
それでは胃酸分泌抑制薬は、どのようなメカニズムで腸内フローラに影響を及ぼすのでしょうか?
胃酸分泌抑制薬を飲むと胃酸分泌が抑制されます。すると、本来なら胃酸で殺菌されていた口腔内常在菌が殺菌されずに大腸内に到達するんです。そしてこの菌が大腸内で悪さをするんですね。
最近の研究では、歯周病菌として有名な口腔内細菌であるFusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)が、大腸がんと密接な関連があることが明らかになっています。
ただ、ここで疑問が湧いてきます。
口腔内常在菌って、酸素下でも生きていける菌です。まあこれは当たり前ですよね。すぐそこに空気がありますから。
ところが、大腸内ってほとんど酸素がない状態なんですよね。それなのになんで口腔内常在菌が大腸内に住み着くことができるんでしょうか?
その答えは「腸漏れ」にあります。
腸内環境が悪くて「腸漏れ」を起こすと、なんと大腸内に酸素が漏れ入りこんでくると言われています。
これにより、腸内に酸素が入り込み、口腔内常在菌が大腸内に住み着くことができるんです。
「腸漏れ」って恐ろしいですね。
その他、消化器疾患治療薬で腸内フローラに影響を及ぼすものとしては、便秘薬です。
詳しいメカニズムはまだ分かっていませんが、下剤の長期服用により、腸内フローラを乱すことが判明しています。
いかがでしょうか。
胃腸に良かれと思って飲んでいる消化器疾患治療薬が、一番腸内フローラを乱す薬剤とは皮肉なものですね。
皆さんも胃薬や便秘薬は飲みすぎないようにしましょう。
珈琲舎のだの「のだブレンド」と「のだロール」です。この美味しいコーヒーとケーキを楽しんでいる時に今回のブログを思いつきました。リラックスって大事ですね。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。