こんにちは、医師の秋山です。
先日近くのスーパーの魚売り場で下のような注意書きがあり、驚きました。
胃カメラを毎日している私にとって、アニサキス症はしばしば見かける疾患ですが、ついに世間に普通に知られるものになったのだなあ、と。つい写真を撮ってしまいました。
アニサキス症は「急性腹症」の原因の一つであり、突然に急激な上腹部痛(いわゆる胃の痛み)で発症することが多くあります。
なぜ起きるかというと、生の魚(サバ・アジ・イワシ・サンマ・・・などなど)に付着していたアニサキス成虫を食した際に、アニサキス虫体が胃の粘膜に食いついてしまうからです。
”アニサキス入りの刺身”を食べた人が全員アニサキス症にかかるかというと、そうではありません。
アニサキスを食べた95%の人は、食道から胃、小腸・大腸と通り過ぎて、便として無事に排出されます。
運の悪い5%の人の胃腸に虫体が(ほとんどが胃です)胃腸の粘膜に食いつき、症状を起こすわけです。
実際に胃カメラで、アニサキスを観察してみましょう。
胃の粘膜に、アニサキス虫体が頭を突っ込んで食いついています。
アニサキス虫体はとぐろを巻いています。
周りの粘膜は、炎症を起こして真っ赤になっています。痛々しいですね。
「鉗子」という虫体を除去する器具が、内視鏡スコープから出てきました。
頭が胃粘膜内に残ってしまわないように、アニサキス虫体を慎重に引き抜いていきます。
無事に除去できました(^^♪
国立感染症研究所の報告では、アニサキス症は全国で年間7000件(2005~2011年の平均)と言われていますが、実際にはもっと多くの方がかかっているはずです。
当クリニックでも1年もたたずに、すでに4件発見されています。
アニサキス症は通年性の感染症ですが、9月10月が多いと報告されています。
なぜ近年、アニサキス症がニュースになるのでしょうか?
アニサキス症が急増している原因は何でしょうか?
それは、「新鮮な生の魚・刺身を食する機会が増えているから」だと思います。
今の時代、美味しい刺身がスーパーで容易に入手できるようになったことはありがたいのですが、アニサキス症を発症するのは怖いですね。
アニサキス症になった方は、これに懲りてもう刺身は食べないのでしょうか?
これがなかなか面白くて、アニサキス症になった方は、2回目・3回目と再感染することがあります。
よほどお刺身が好きなのでしょうか。
それとも、アニサキスが食いつきやすい胃粘膜になっているのでしょうか?
「アニサキスが食いつきやすい粘膜とがんが関連している」という報告もあり、実はアニサキス症は突き詰めていくと興味深いものがあります。
アニサキス症にご用心!です。