福岡天神内視鏡クリニックブログ

便秘シリーズ⑤ 便秘治療の最終目標

おはようございます。
今回は便秘の話の最終回です。
便秘治療の最終目標は、ただ単に便が出るようにすることではなく、バナナのような普通便が出せるようにすることです。これを達成するのは、なかなか難しいですが・・・。

排便は便が直腸に充満された状態で腹圧をかけると得られます。排便時の最後の関門である肛門管は細く通過しづらいですが、普通便の場合、便そのものに弾性があるため、容易に変形して通過できます。このため、ごく軽いいきみのみで短時間で排便可能です。
しかし、便秘の代名詞である硬便の場合、肛門管で変形できず、排便するには強い怒責が必要となり、通過時間もかかります。さらに、肛門は非常にデリケートな感覚臓器であるため、ほんのわずかでも便が残存すると、残便感が残り排便後も満足感が得られません。
便秘治療で毎日排便が得られるようになっても、残便感があり、お腹がスッキリしなけれれば、便秘は改善していないも同然です。

当クリニックには「他院で下剤をもらったけど、便秘が良くならない」と来院されれる方が沢山おられますが、大体、次の2パターンです。
①治療前と変わらず硬便で毎日排便が得られない
②毎日排便が得られるようになったが、便が軟らかく1回の排便量も少なく残便感がある

①のパターンは、下剤の効果がまだ十分に発揮されていない状況です。
一方、②のパターンは逆に下剤が効きすぎている状況です。大腸はねじれのある筒状の臓器です。水様便や泥状便のように柔らかくなると、重力の関係で下になる方向に便が溜まるため、曲がり角で重力に打ち勝ってその先に流れていくことができなくなります。
このため、便が柔らかいと直腸とS状結腸のつなぎ目の曲りが強い直腸S状結腸移行部を全ての便が越えることができず、一部が逆流してしまいます。逆流した便は、しばらくすると再び直腸に戻ってくるため、1回の排便量が少なく回数が増え、残便感も残ることになります。

いずれの場合も下剤の量を調整、または種類を変更することにより普通便に近づくと満足度が高まります。
便を出すことだけを目指して、下剤を飲んでも満足が得られないのはこのためです。
便を出すことだけを目指す治療から、便の形にもこだわる治療を目指してみませんか?

癌にならない腸活 実践メルマガ講座 乳酸菌バナー 内視鏡チャンネルバナー

秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。