福岡天神内視鏡クリニックブログ

酸分泌抑制薬の功罪

おはようございます。

私たち消化器内視鏡専門医が知識のup dateのために愛読している医学雑誌が2つあります。

医学書院の「胃と腸」と東京医学社の「消化器内視鏡」です。

この「消化器内視鏡」に逆流性食道炎や胃十二指腸潰瘍の治療で良く用いられる胃酸分泌抑制薬について特集されていたので今回は、その一部を少しご紹介したいと思います。

 

 

プロトンポンプ阻害薬(PPI)と言われる胃酸分泌を強力に抑制する胃薬は、逆流性食道炎、胃十二指腸潰瘍など多くの上部消化管疾患の治療に用いられる消化器内科の分野ではメジャーな薬の1つです。

酸逆流症状などを改善させる非常に効果的な薬ですが、私自身は患者さんに対して症状の強い短期間のみしか処方しないように心がけています。極力、薬で症状を緩和させるのではなく、生活習慣改善などで酸逆流を起こしにくい体を手にいれるよう指導しています。その理由は、PPIの長期投与には懸念される副作用があるからです。

 

口から侵入した細菌は胃酸で殺菌されますが、PPIを服用していると、腸管への細菌侵入を許してしまうため、カンピロバクター腸炎やサルモネラ腸炎などの細菌性腸管感染症のリスクが高まると報告されています。

また、胃酸は小腸でのカルシウム吸収にも関与しているため、PPI服用は骨折や骨粗鬆症のリスクを高めると報告されています。ビタミンや鉄、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルの吸収障害やそれに伴う認知症発症や不整脈などのリスクを高めるという報告もあります。

さらに、胃がんや大腸がん、胃カルチノイド腫瘍などの悪性腫瘍の発生を促進する可能性なども報告されています。

このようにPPIの長期投与には、様々な副作用のリスクが懸念されるため、逆流性食道炎などに対して漫然とPPIを内服するのはお勧めしません。

 

 

いつまでも若くいたい、健康でいたいというのは多くの人が望んでいるところだと思いますが、そのためには食生活や生活習慣改善などの努力が必要です。

お悩みの場合は、ご相談ください。

酸逆流などの症状出現には、ほとんどの場合、原因があります。安易に薬に頼るのではなく、その原因を突き止め、それを改善させるためのお手伝いが少しでも出来れば幸いです。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。