福岡天神内視鏡クリニックブログ

逆流性食道炎を考察する その21 逆流性食道炎とプロトンポンプ阻害薬

おはようございます。

逆流性食道炎シリーズ第21回です。

今回からは、逆流性食道炎シリーズの締めくくりとして逆流性食道炎の治療で使う薬について何回かに分けてお話ししていきます。

今回は逆流性食道炎の薬物治療として最も処方されている胃酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)についてお話しします。

 

 

胃酸は、アセチルコリンやヒスタミンという化学物質ガストリンというホルモン胃粘膜の壁細胞にある受容体に結合すると胃壁細胞膜上に存在しているプロトンポンプというタンパク質から分泌されます。

 

PPIはこの胃酸分泌の製造元にあたるプロトンポンプに結合することで、プロトンポンプの働きをブロックし、胃酸の分泌を抑制します。

PPIは、クスリを服用していないときの胃酸分泌量を約90%低下させる効果があると言われるほど、非常に強力な胃酸分泌抑制薬です。

胃酸が過剰に分泌されたことで出現した症状や病気の治療に最も有効なクスリです。

 

 

逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜が傷つき、びらんやただれなどの炎症を起こしてしまう病気です。

PPIにより胃酸の分泌量を大幅に抑えると当然、食道に逆流する胃酸も大幅に減るため、逆流性食道炎の症状は改善します。

 

しかし、胃酸分泌の製造元であるプロトンポンプをクスリでブロックしても、また、新たにプロトンポンプが作られてしまうため、この新たに作られたプロトンポンプもさらにブロックしなければ、胃酸分泌は抑制できません

このため、PPIは逆流性食道炎の治療に非常に効果的なクスリですが、即効性はなく、服用を開始してから十分な胃酸分泌抑制力を発揮するまで少なくとも3~5日間かかると言われています。

PPIを服用すると服用開始後3日で約70%2週間で約90%の患者さんで症状が軽減すると報告されています。

 

PPIの服用は1日1回だけでOKです。

毎日大体決まった時間の服用であれば、朝昼晩のいつ服用しても構いません。

食前の服用でも食後の服用でもどちらでも構いませんが、オススメは食事の前の服用です。

 

 

内服薬は、服用後に腸から体内に吸収されて血液の中に取り込まれ、血中濃度が高まることで効果を発揮します

このため、服用後すぐに効果を発揮するわけではありません

 

PPIは分泌された胃酸の効果を打ち消すクスリではなく、胃酸の分泌を抑えるクスリのため、食後の服用だと、食事摂取ですでに分泌されてしまった胃酸の影響を抑えることは出来ません

食前の服用であれば、食事によりプロトンポンプが活性化され胃酸が分泌されるのを抑えることが出来るため、最も効果的です

 

 

PPIは、逆流性食道炎に対して非常に有効なクスリですが、PPIの長期投与には懸念される副作用があります

胃酸分泌は強力に抑えすぎると、腸内細菌叢のバランスが変わるため、下痢などのお腹の不調が出現しやすくなります

また、口から侵入した細菌は胃酸で殺菌されますが、PPIを服用していると、腸管への細菌侵入を許してしまうため、カンピロバクター腸炎やサルモネラ腸炎などの細菌性腸管感染症のリスクが高まると報告されています。

また、胃酸は小腸でのカルシウム吸収にも関与しているため、PPI服用は骨折や骨粗鬆症のリスクを高めると報告されています。

ビタミンや鉄、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルの吸収障害やそれに伴う認知症発症や不整脈などのリスクを高めるという報告もあります。

さらに、胃がんや大腸がん、胃カルチノイド腫瘍などの悪性腫瘍の発生を促進する可能性なども報告されています。

 

このようにPPIの長期投与には、様々な副作用のリスクが懸念されるため、逆流性食道炎などに対して漫然とPPIを内服するのはお勧めしません

 

 

これまでのシリーズでも繰り返し言いましたが、逆流性食道炎の一番大切な治療は生活習慣改善や食生活の改善などの原因の改善です。

これには患者さん自身の努力が必要です

この根本的な原因の改善を行わず、薬による加療だけを行っても効果があまり得られないだけでなく、一時的に効果があったとしても、薬の服用を中止するとすぐに再発してしまいます

逆流性食道炎を指摘された場合は、生活習慣を改める良い機会です。

まずは現在の習慣を一度見直してみましょう。

 

症状でお悩みの場合は、是非一度、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。