福岡天神内視鏡クリニックブログ

逆流性食道炎を考察する その29 逆流性食道炎と維持療法・オンデマンド療法

おはようございます。

逆流性食道炎シリーズ第29回です。

逆流性食道炎の治療である維持療法とオンデマンド療法ってご存知ですか?

 

 

以前にもお話ししましたが、逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜が傷つき、びらんやただれなどの炎症を起こしてしまう病気です。

そこで食道に胃酸が逆流しないようにするのが、治療薬としては最も有効です。

 

このため、逆流性食道炎で最も用いられる薬は、胃酸そのものの分泌を強力にシャットアウトすることで食道への胃酸逆流をブロックするプロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)です。

これらの薬は非常に強力に胃酸の分泌を抑えますが、食道への胃酸逆流自体はコントロール出来ません

あくまでも胃酸の分泌量を減らすことで、相対的に食道に逆流する胃酸の量を減少させ、症状を改善させるだけです。

 

 

したがって、症状が改善したからといって薬の内服をやめると、薬により抑えられていた胃酸の分泌量はすぐにもとに戻るため、胸やけや呑酸症状、胃痛などが再発する可能性があります

実際に症状が改善して薬の服用を中止した患者さんの50~80%が半年から1年以内に逆流性食道炎を再発するという報告があります

 

 

これまでに何度もお伝えしてきましたが、逆流性食道炎の一番大切な治療は生活習慣改善や食生活の改善などの原因の改善です。

この根本的な原因の改善を行わず、薬による加療だけを行っても効果があまり得られないだけでなく、一時的に効果があったとしても、薬の服用を中止するとすぐに再発してしまいます

 

 

しかし、生活習慣の改善は、即効性がないため、根本的な原因が改善出来るまでの間、再発を起こしやすい難治性の逆流性食道炎の患者さんでは、症状がなくなり食道粘膜の炎症が治った後も、その状態を維持するためにPPIやP-CABの服用を継続し続ける治療方法が維持療法です。

 

一方で、再発は起こしにくいが、時折、酸逆流症状が出てしまうような軽症の逆流性食道炎の患者さんでは、症状が出たときだけ患者さんの判断で薬の服用を開始し、改善次第、中止するという治療方法がオンデマンド療法です。

 

オンデマンド療法は、内服後、すぐに薬の効果が出ることが必要なため、PPIよりも作用発現までの時間が短いP-CABが適しています

 

 

維持療法もオンデマンド療法も生活習慣の改善が効果を発揮するまでの間のつなぎの治療です。

逆流性食道炎がある場合は、まずはしっかり、現在の生活習慣を一度見直し、改めていきましょう。

症状でお悩みの場合は、是非一度、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。