福岡天神内視鏡クリニックブログ

便秘を考察する その3 便秘と性別・年齢

おはようございます。

厚生労働省による2016年の国民生活基礎調査では、便秘の有病率は全体で2~5%、男性は2.5%、女性は4.6%と報告されており、男女差があります。

年齢別ではさらに差があり、思春期以前は男女差がほぼなく、思春期以降は女性の方が多くなります

特に女性では10代後半から急増しますが、男性は60歳から急増するため、80歳以降になると男女差がなくなります。

 

 

このような世代間や性別による便秘患者数の違いは何が影響しているのでしょうか?

原因としては次のようなことが影響していると考えられています。

 

①若い世代では女性の方が便秘が多い理由

1)女性ホルモンの影響

月経が始まる初経後は腸管の運動機能に著しい影響を与える女性ホルモンの変化があり、この影響で若い女性は月経の前後で便秘や下痢を起こしやすくなります

女性ホルモンの1つである黄体ホルモンには、体内に水分や塩分をためる作用があるため、大腸から便の水分を吸収し、便を硬くします。

また、黄体ホルモンは妊娠継続ホルモンでもあるため、流産しないように子宮筋の収縮を抑制する働きも持ちますが、大腸の運動も抑制する作用もあります。

この作用により、特に黄体ホルモンが多く分泌される月経前や妊娠初期は便秘になりやすくなります。

一方、月経が始まると下痢になりやすいのは、不要になった子宮内膜を排出するために子宮を収縮させるプロスタグランジンという物質の影響です。プロスタグランジンは腸の動きを促進する作用があり、腸が動きすぎて下痢になります。

 

2)ダイエットなど食事量の影響

摂取する食事量が少ないと当然便も少なくなります。

体重を落とすことを重視するあまり食事量を減らすと、相対的に食物繊維や水分、脂肪分も減るため、大腸の運動にも影響が出てしまい、さらに便も硬くなるため便秘になります

 

3)運動量や筋肉の影響

女性は男性よりも運動量が少なく、また腹筋などの筋力も弱いため、排便時に便を送り出す力が弱くなります。

 

4)大腸の長さの違いの影響

2013年に日本消化器内視鏡学会雑誌に発表されたデータによれば、50歳以上の日本人全体の大腸の平均の長さは154.7cmと報告されています。

男女別では、男性は平均154.3cm、女性は平均155.2cmと報告されており、実は身体の大きな男性よりも小さな女性の方が大腸は長くなっています

しかし、体格自体は女性の方が小さいため、当然、腹腔内という大腸を収納するスペースも女性の方が小さくなります。

さらに、女性には子宮があるため、大腸を収納するスペースは更に狭くなります。

小さな空間に長いものを収納するためには、細かく折りたたんで収納しなければならず、女性の方が大腸の折れ曲りが多くなり、便が通過しにくくなります。実際、内視鏡検査も、女性は挿入の難しい方が多い印象です。

 

 

②加齢に伴い便秘が増加する理由

運動量が減少したり、食事量の低下や食事内容の変化、仕事の変化、併存疾患の影響や定期内服薬の影響などが関与していると考えられています。

また、加齢に伴い腸内細菌のバランスが崩れてくるのも影響していると考えられています。

さらに女性の場合は、閉経に伴い女性ホルモンが変化することも強く影響します。

 

 

このように便秘は様々な要因により引き起こされ、性別や年齢によってもその原因は様々です。

便秘の治療を行うためには、これらを踏まえた上で、まずは原因となっていると考えられる生活習慣の改善(食事や運動)を行いながら、症状がある場合には、薬で排便をサポートしていくというのが大切です。

 

お悩みの方は、是非一度、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。