おはようございます。医師の秋山です。
コロナ禍の影響により、健康診断の受診率が下がっているというニュースを見ました。これに伴い、がんや他の病気の数も減ってるそうです。
これは見かけ上減っているだけです。
健康診断を受けてない、あるいは精密検査を控えたために、病気と診断されていない方が増えただけで、これらの病気が減っているわけではなく、ただ隠れているだけなんです。
ただ、コロナも落ち着きつつありますので、これから健康診断や精密検査を受ける方も増えてくるのではないかと思います。
そこで、今回は、健康診断で一番診断率が高いと言われる「脂肪肝」について2回にわたり解説したいと思います。
以前も一度脂肪肝について解説しましたが、そこからさらに掘り下げて話をしたいと思います。
「脂肪肝」とは、文字通り、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態のことを言います。実は、健康診断を受けた成人の約30%の方が脂肪肝なんです。結構多いですよね。
なんで肝臓に脂肪がつくんでしょうか?脂肪の摂りすぎ?
いや、答えは炭水化物や糖質の摂りすぎです。
ご飯、ラーメン、うどん、そば、お菓子など、これらの摂りすぎが脂肪肝の原因になってしまいます。
美味しそうですね。私も大好きです。
これらの食べ物を食べると、腸の中で分解されてブドウ糖となって吸収され、グリコーゲンとして肝臓に貯蔵されます。
そして、お腹が空いた時などに、肝臓に貯めておいたグリコーゲンを使って、血糖値を上げたりしてます。
ただ、このグリコーゲンをためすぎると、今度は中性脂肪に変わってしまい、そしてこの中性脂肪が肝臓に溜まってしまうんです。
この中性脂肪がチクチクと肝臓を作っている肝細胞を攻撃して、壊された肝細胞がAST、ALT、γGTPを吐き出して、これらの数値が上がってしまうんです。
これが脂肪肝のメカニズムになります。
健康診断で肝数値(AST、ALT、γGTPなど)が高い方は、脂肪肝であることが多いのが現状です。
次に、脂肪肝の原因について解説します。
脂肪肝の原因は、大きく以下の2つになります。
A.アルコール性脂肪肝→長年の飲酒により起こってくる脂肪肝です。1日60g以上のアルコールを飲む方は要注意です。
(アルコール20gは、ビールで500ml、日本酒で1合、ワインで200ml)
B.非アルコール性脂肪肝
nonalcoholic fatty liver diseaseの頭文字をとってNAFLD(ナッフルディー)と読みます。
→男性で1日30g未満、女性で1日20g未満のアルコール摂取量なのに脂肪肝になっている方はこちらに分類されます。
肝臓内科の領域の中で、にわかに注目されているのが、NAFLD(ナッフルディー)になります。なぜかというと、全国で1000万人以上の方がこのNAFLD(ナッフルディー)と言われているからです。
「検診の肝数値が高いから脂肪肝かもしれないけど、別に症状もないし、いいや。」
と思っている方、いませんか?
「NAFLD」の10~20%の方が、NASH(ナッシュ)という病気にひっそりと進行します。
NASHとはnonalcoholic steatohepatitisの頭文字をとったものです。日本語訳は、「非アルコール性脂肪肝炎」です。
「NASHってなんだ?NAFLDとどう違うんだ?」
と思っている方多いんじゃないでしょうか?
確かに、NAFLDもNASHも基本的に無症状ですし、身体的には特に変わりはないです。血液検査でも両者の区別をつけることはできません。確定診断は、肝臓の組織を一部採取する肝生検になります。
簡単に説明すると
NAFLDはただ肝臓にたくさん中性脂肪がついただけの状態です。ですので、肝炎は発症していません。
NASHは、肝臓についた中性脂肪をエネルギーとして使う時に肝細胞が傷ついて、それが積もり積もって肝臓に炎症を起こして肝炎を発症した状態です。
こんな感じですね。でも、NASHになるメカニズムは正直言ってよくわかっていないんです。
ただ、怖いのは、NASHになると、10年以内に10~20%の方が肝硬変に進行します。
肝硬変になると、今度は肝臓がんができてしまうことがあります。
印象としては、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎よりも、NASHの方が肝硬変になるスピードが早いです。要注意ですね。
次回は、脂肪肝の治療について解説します。
それでは今週も頑張りましょう。クリニックでお待ちしております。