福岡天神内視鏡クリニックブログ

便秘を考察する その37 弛緩性便秘について

今回は「弛緩性便秘」について解説したいと思います。

 

弛緩性便秘は別名、下剤性腸症と言われることもある便秘です。

ダイオウ、センナ、アロエなどの大腸の神経を刺激することで強制的に便を排出させる刺激性下剤(アントラキノン系下剤)の連用により腸が弛緩することが原因で起こる便秘です。

 

私たちが普段行っている通常の排便では、横行結腸の中央部付近から直腸にかけて溜まっている便を排便しています。

しかし、刺激性下剤を服用した際の排便は、盲腸から直腸までの大腸全体を薬の力で強制的に動かして便を排便させようとします。

このため、刺激性下剤を服用した後の排便は、まだ消化・吸収が行われている途中の「明日出るはずの便」「明後日出るはずの便」まで強制的に排便させます。

当然、刺激性下剤を服用すると、本来、まだ排便されないはずの便まで排便されるため、便がどっさり、たっぷり出るため、非常に効果がある薬と錯覚してしまいます。

 

 

ドラッグストアで購入可能な市販の下剤薬、漢方薬の多くは、この刺激性下剤です。

食生活や運動不足の見直しなどの生活習慣の改善を特にしなくても、クスリを服用すれば出したいときに排便できます。

楽に排便ができるため、服用すると多くの人はこんなことなら早くクスリを飲めば良かったとその後は安易にクスリを服用するようになってしまいます。

 

でも、その便はクスリの服用による強制排便であり、自然の便意による排便ではありません。

刺激性下剤による強制排便を繰り返していると、腸が常に刺激され続けることで疲れ果て、大腸の神経にまでダメージがおよび次第に腸を自力で動かすことが出来なくなります

ダメージを負った大腸の動きは弛緩し、自分の力(腸の動き)で排便する力を失い、やがて薬を増量しても効果が得られなくなります

これが、「弛緩性便秘」です。

 

 

また、刺激性下剤を服用していると、この腸の弛緩に加えて、直腸に到達した便を脳が感じて排便の指令を出すという連携も上手くいかなくなります。

自然な便意自体を感じることができなくなり、自然排便が全く出来なくなります。

さらに刺激性下剤は、毎日継続して服用していると「服用しないと便が出せなくて不安になる」「便を出したくて規定量を超えた量を服用している」などの精神的な依存性を引き起こす恐れがあります。

便秘で悩んでいる方の多くは、とにかく毎日便を出すことにだけにとらわれる傾向がありますが、これは将来的に便秘を更に悪化させることに繋がります。

便を毎日出すことにとらわれて毎日下剤を連用することは止めましょう。

 

 

【対処法】

最も有効な対処法は、刺激性下剤の服用を中止することです。

とはいえ、弛緩性便秘を起こしている人が、突然、刺激性下剤を止めると、全く排便出来なくなるため、まずは、毎日の服用を週2~3回の服用にとどめ、段階的に量を減らして、薬からの離脱を図るのが大切です。

段階的に刺激性下剤を減らしながら、下剤は酸化マグネシウムなどの習慣性のない下剤に変更し、同時に生活習慣の改善、定期的な運動とバランスの良い食生活を続け、オリゴ糖やプロバイオティクスをサポートで摂取するのが大切です。

 

便秘の治療はダイエットと一緒です。すぐに結果を求めると逆効果になります。

焦らず少しずつ、改善していきましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。