おはようございます。
前回、胃炎の京都分類でピロリ菌感染の状態、胃癌リスクを評価するのに用いられる実際の胃炎の内視鏡所見のうち、ピロリ菌感染により起こる慢性胃炎である萎縮性胃炎の内視鏡所見「萎縮」についてお話ししました。
今回は、ピロリ菌感染胃炎の中でもこの内視鏡所見があると胃がんの発生リスクが高いと考えられている「腸上皮化生」についてお話ししたいと思います。
腸上皮化生は主にヘリコバクター・ピロリ感染などにより胃粘膜上皮に炎症が生じ、炎症により胃粘膜上皮が破壊と再生を繰り返すと、再生される際に胃粘膜が腸管粘膜上皮の形態に変化して再生されるように変化していきます。この胃粘膜上皮が腸管粘膜上皮として再生された変化を「腸上皮化生」といいます。
ピロリ菌感染が起こると、活動性炎症により萎縮性胃炎を来たし、最終的には腸上皮化生へと至ります。
つまり、腸上皮化生粘膜は、ピロリ菌感染による慢性胃炎の最終形態です。
腸上皮化生は、慢性胃炎の広がりとともに胃の前庭部から体部に認められる事が多く、内視鏡の通常光観察では、敷石状に点在する灰白色の扁平な隆起として認められる事が多い所見です。
高性能な胃カメラに搭載されているNBI(Narrow band imaging)という特殊光観察機能や病変を100倍にズーム観察可能な拡大観察機能で腸上皮化生を観察すると、灰白色の扁平隆起部にLight blue crestといわれる青白い縁取りが認められます。
図.ヘリコバクター・ピロリ陽性例の胃体部にみられた腸上皮化生
a:通常光観察
b:NBI併用拡大観察
春間賢.胃炎の京都分類.日本メディカルセンター,2014より転載
ヘリコバクター・ピロリ菌感染が判明し、除菌治療を行い、ピロリ菌がいなくなった後も胃底腺粘膜の萎縮(萎縮性胃炎)とともに残存することが多い所見です。
腸上皮化生は胃がんの発生リスクとなる背景胃粘膜であるため、私たち消化器内視鏡専門医にとって、腸上皮化生が認められる胃は胃がんが存在する可能性が高く、検査時により慎重な観察が求められる非常に重要な所見となります。
このように胃炎の京都分類で定義されている胃炎の内視鏡所見は、ピロリ菌感染の状態、胃がんスクを評価する上で、私たち消化器内視鏡専門医にとって非常に重要な所見です。
これらの所見を一つずつ丁寧に拾い上げて、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。
難しいお話しだったと思いますが、私たち消化器内視鏡専門医は、これらの所見を見落とすこと無く、拾い上げて胃カメラ検査時に患者様一人一人のピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクを推測し、必要な内視鏡検査のフォローアップのタイミングを提案したりしています。
私たち消化器内視鏡専門医は日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。
ご不明な点がありましたら、ご相談ください。