おはようございます。
前回は、ピロリ菌の感染診断法のうち血中抗ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査についてお話ししました。
今回は、尿素呼気試験についてお話ししたいと思います。
尿素呼気試験は、ピロリ菌の持つウレアーゼ活性を利用し、経口投与した13C標識尿素がアンモニアと13C標識二酸化炭素に分解されるのを呼気中の13C標識二酸化炭素によって判定する検査です。13C標識尿素の服用前と服用後の呼気を専用の袋に採って測定します。
尿素呼気試験は、検査に伴い身体にかける負担はなく、検査は簡単で検査自体の精度も高く、日本を含む世界中のガイドラインでピロリ菌の除菌治療後の除菌判定に推奨されている検査です。
基本的に検査精度は高い検査ですが、他の検査と同様に偽陰性と偽陽性に注意する必要があります。
偽陰性で注意すべき点は、検査時に服用している薬です。
これを避けるために、ピロリ菌活性を抑える静菌作用のある抗菌薬や一部の胃粘膜の防御因子増強薬は、尿素呼気試験実施前に2週間休薬する必要があります。
また、ピロリ菌のウレアーゼ活性は、酸性環境に依存するため、プロトンポンプ阻害薬やカリウムチャネル競合型胃酸抑制薬は、偽陰性のリスクを高めるため、尿素呼気試験実施前に2週間休薬する必要があります。
偽陽性で注意すべき点は、除菌治療後のウレアーゼ試験の陰性化に時間がかかる患者さんがいるということと、ピロリ菌以外にも口腔内にウレアーゼ活性を持つ細菌が存在することがあることです。
このため、実際にはピロリ菌はいないにも関わらず、菌がいるような結果が間違って出てしまうことがあります。
このような症例の場合、ウレアーゼ試験陽性であっても、その検査数値はあまり高くありません。このような症例では、内視鏡検査所見からピロリ菌の現感染を強く疑う所見が認められないなどの場合は、他のピロリ菌診断の検査でも確認することが必要です。
ピロリ菌感染を診断する各検査の結果と内視鏡検査での胃粘膜所見に矛盾がないかを併せて評価し、両者の結果に乖離がある場合は、追加でさらに他のピロリ菌の感染診断検査を行うことがやはり大切です。
私たち消化器内視鏡専門医は、これらの検査結果を一つずつ丁寧に拾い上げていくことで、患者様一人一人のピロリ菌感染の状態や胃がんリスクを評価し、胃がんの早期発見・早期治療を目指しています。
私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。