おはようございます。
前回は、ピロリ菌の除菌治療の効果に関して患者さんから良くある質問についてお話ししました。
今回もピロリ菌の除菌治療に関して患者さんから聞かれる質問に関してお話ししたいと思います。
【よくある質問1】
70歳以上の高齢者でも除菌治療はした方が良いのでしょうか?
回答:
高齢者の場合、基礎疾患を持っている人も多いため、基礎疾患によっては除菌治療を行うことが難しいこともありますが、基本的には高齢でも除菌治療をおこなった方が良いと考えられます。
除菌治療をおこなう大きな目的の1つは、将来の胃がんの発生リスクを下げることです。胃がんの発生リスクを下げるという点においては、高齢者の場合、除菌治療をおこなっても、正直なところあまり恩恵を受ける事は出来ないと考えられます。ピロリ菌による胃がんの発生リスクは、感染から除菌治療までの期間が長くなればなるほど高くなるため、高齢者の場合、除菌治療をおこなっても胃がんの発生リスクという点ではそれほど除菌治療のメリットは享受できません。
では、何故、高齢者でも除菌治療をする必要があるかというと、良性の胃十二指腸潰瘍の発生を予防するためです。
ピロリ菌感染は、良性の胃十二指腸潰瘍の発生のリスクも高く、良性潰瘍の多くは、ピロリ菌感染が原因です。除菌治療を行うことで、多くの胃十二指腸潰瘍の発生を予防することが可能になります。
高齢者の場合、脳梗塞などの脳血管障害や狭心症・心筋梗塞などの心疾患の予防のためやこれらの基礎疾患のために、抗血栓薬・抗凝固薬という血液をサラサラにする薬を服用している人も多くいます。これらの薬を服用している人に胃十二指腸潰瘍が発生すると、病変部から大量出血を来たし、致死的な経過をたどる危険性が高くなります。
この胃十二指腸潰瘍の発生リスクを下げるためにも、高齢者であっても除菌治療は、基本的にはおこなった方が良いと考えられます。
ただし、基礎疾患のために、胃十二指腸潰瘍の治療薬である胃酸抑制薬を定期服用されている場合は、潰瘍の発生は予防できるため、除菌治療は行わなくてもいいケースもあります。
【よくある質問2】
ピロリ菌除菌後は、どれぐらいの間隔で胃カメラ検査を受ければ良いですか?
回答:
基本的には年に1回の胃カメラ検査を受けることをオススメします。
ただし、検査をした際に胃がん治療後や除菌後に著明な地図状発赤や腸上皮化生粘膜を認める胃がんの発生リスクが高い場合は、年に1~2回の胃カメラ検査が推奨されます。
如何だったでしょうか?
ピロリ菌に関する皆さんの疑問が少しでも解消されれば幸いです。
私たちは、日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。
ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。