おはようございます。
前回、胃の機能性疾患である機能性ディスペプシアについてお話しました。
今回は大腸の機能性疾患である過敏性腸症候群について簡単にお話ししたいと思います。
過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)は、お腹の痛みや便秘と下痢を繰り返すなどのお通じ異常が数ヶ月以上も続くにもかかわらず、大腸カメラ検査を行っても症状の原因となる異常が何も無い場合に判断される病気です。
大腸カメラ検査をしても大腸炎や大腸がんなどの症状の原因となる器質的疾患はなく、大腸の不調・便通異常だけがある病態なので機能性疾患の1つに該当する病気です。
日本人の約10%に過敏性腸症候群と診断される症状があると考えられています。機能性ディスペプシアと同じく、若い女性に多くみられると言われており、命に影響を及ぼす病気ではありませんが、仕事や勉強に集中できない、食事が食べられず身体がキツいなど生活の質を著しく損なう病気です。
排便回数の異常や便の形状の異常(便秘と下痢を繰り返すなど)が数ヶ月以上にわたって継続し、排便によって軽快する腹痛を伴うなどが特徴です。
採血や内視鏡検査をしても症状の原因となる炎症や腫瘍などの器質的な異常はありません。
人間の腸は食べ物の消化・吸収と不要物の排泄を行っていますが、この役割を果たすため、腸にはその動き(蠕動運動)と変化を感じ取る知覚機能が備わっています。
腸の蠕動運動や知覚機能は、腸と脳の間で情報交換により制御されていますが、ストレスや緊張状態の継続により腸の蠕動運動が激しくなると腸の知覚過敏が起こるためお腹の痛みが出るようになります。
この腸の知覚過敏の状態が、過敏性腸症候群の症状の原因です。
特に感受性が高くストレスを感じやすい10~30代の若い世代が入学・入社・職場の異動・転職・結婚・出産などのタイミングで発症しやすい病気です。
また、年齢を重ねるにつれて、ストレスを解消しやすくなるため、年齢が上がるほど過敏性腸症候群の患者さんは少なくなります。
ストレス以外にも細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかって治った後も過敏性腸症候群を発症しやすいと言われています。感染により腸に炎症が起こると粘膜が弱くなるのに加えて腸内細菌のバランスが変化するため腸の蠕動運動の亢進と知覚過敏が起こるためと考えられています。
過敏性腸症候群は、あくまでも腸に炎症や腫瘍など症状の原因となる器質的疾患が無いことが診断には必須です。過敏性腸症候群と診断するためには、大腸カメラ検査で大腸癌などの悪性疾患や炎症性腸疾患などがないことを確認する必要があります。
50歳以上の患者さんや便通異常に加えて血便や発熱、体重減少、異常な身体所見などのアラームサイン(危険徴候)もある場合、過去に大腸の病気の既往がある場合、大腸がんの家族歴がある場合は、過敏性腸症候群以外の器質的疾患である可能性があります。
便通異常があるにもかかわらず、1年以内に大腸カメラ検査を受けたことがない場合は、まずは検査で器質的疾患の有無を確認することをお勧め致します。このような症状で悩んでいる場合は、一度お気軽にご相談ください。