福岡天神内視鏡クリニックブログ

機能性疾患って知ってますか?その5 過敏性腸症候群の治療について

おはようございます。

以前に大腸の機能性疾患である過敏性腸症候群(IBS)がどのような病気なのかについて簡単にお話しましたが、今回は過敏性腸症候群の治療方法に関して簡単にお話ししたいと思います。

 

繰り返しになりますが、過敏性腸症候群は大腸自体には炎症やがんなどの症状の原因となるような異常が何もないにも関わらず症状だけがある病気です。

過敏性腸症候群はストレスや不安、緊張状態などが原因となり心と身体のバランスが取れなくなることで腸の働きがおかしくなり症状が出現すると考えられています。

 

このため、過敏性腸症候群の症状の出方には次のような特徴があります。

1)仕事や学校が休みになる土日祝日や好きなこと・楽しいことに没頭しているときには普段よりも症状が軽くなる。

2)休み明けの仕事始まりや試験、大事な仕事などの前になると症状が強く出やすい。

 

過敏性腸症候群の根本的な原因は、ストレスや不安、緊張状態などによる自律神経の乱れです。

この一番の原因であるストレスや不安を取り除かなければ、残念ながらどんな薬を服用してもその症状を完全に無くすことはできません。

このため、過敏性腸症候群の治療としては、ストレスや不安を取り除く根本的な原因を取り除く調整をしながら、消化器内科的には腸に対して次の様なアプローチでサポートを行い、症状の緩和を目指します。

 

①食事指導

食物繊維をしっかり摂取し、高FODMAP食の摂取を控えます。過敏性腸症候群では、高FODMAP食の摂取で症状が悪化しやすいと言われています。

【FODMAPとは?】

Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(2糖類)、Monosaccharides(単糖類)and Polyols(ポリオール:ソルビトール、マンニトール、キシリトール)の略です。腸内で発酵し吸収されにくくなる4種類の糖類をまとめてFODMAPといいます。これらの糖類をたくさん含む食事を高FODMAP食といいます。FODMAPは小腸で吸収されにくい性質を持っているため、これらの食事を摂取すると小腸内の糖質濃度が高くなり、その結果、水分が小腸内に引き込まれて下痢や腹痛を誘発します。また、これらの糖類は発酵しやすく大腸内でガスを発生させるため腹部膨満も出現します。

 

②生活指導

自身が何に対してストレスや不安を感じているかを明らかにし、その原因を把握することで、原因を取り除きます。過敏性腸症候群では、脳の疲れが症状を悪化させるため、しっかりと睡眠を取るのも重要です。脳の興奮を抑えて、良好な入眠を得るために、入眠の2時間前からはスマホを触ったりするのは止めましょう。脳が興奮し良好な入眠が出来なくなります。

 

③薬物治療

腸内環境を整える整腸剤や便の形を調節する薬を服用することで、腸の働きをサポートし、症状の緩和を目指す薬です。症状の原因となる根本的な原因を取り除く物では無いため、ストレスなどの自律神経の乱れが残っているとあまり効果が得られません。消化器内科で使用する薬物はあくまでも腸の動きをサポートする薬でしかありません。このことをしっかりと理解し、症状の原因となっている自律神経の乱れを取り除くための調整をしていきましょう。

 

 

過敏性腸症候群は、自律神経の乱れの原因となっている自身の周辺環境の見直しや調整を行わず、薬だけで治療を行っても症状の改善は期待できません。

まずは、自身が感じている潜在的なストレスの把握と周辺環境の見直しや調整を行い、対症療法で腸の働きをサポートしながら症状緩和を目指しましょう。

ストレスや不安に対する治療は、自身で調整するのが難しい場合は、心療内科的なアプローチが必要となります。

 

繰り返しになりますが、過敏性腸症候群は炎症や腫瘍など症状の原因となる器質的疾患が無いことが診断の大前提です。

血便や発熱、体重減少などの異常がある場合は、過敏性腸症候群以外の病気が原因になっている可能性が高く要注意です。

いずれにしてもお腹の異常がある場合は、まずは内視鏡検査で器質的疾患の有無を確認することをお勧め致します。お悩みの場合は、是非一度ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。