みなさんこんにちは。
萱嶋です。
3月になりました。
春ですね。
内視鏡の季節がやってきました。
さて、みなさんは「食道裂孔ヘルニア」を知っていますか。
食道裂孔ヘルニアは胸とお腹の境界にある横隔膜と呼ばれる薄い筋肉の膜に開いている食道裂孔という穴を通して、お腹の中にある胃や大腸・小腸などの臓器が胸に脱出する病態です。
大部分の方は胃だけが脱出している軽度の食道裂孔ヘルニアですが、穴が大きくなると胃だけではなく大腸や小腸も脱出するようになります。非常に頻度の高い疾患として知られており、内視鏡検査を受けられた方の約半数に食道裂孔ヘルニアが診断されます。
加齢や生活習慣などが原因で起こる場合と、生まれつき食道裂孔ヘルニアを起こしやすい場合があります。高齢化の進行や、食生活の欧米化により肥満者が増えていることから、近年増加傾向にあります。
食道裂孔ヘルニアは食道と胃のつなぎ目が緩むことで逆流性食道炎を生じる最も大きな原因であり、逆流性食道炎に関連した様々な症状を引き起こす可能性があります。
原因
原因はほとんどが腹圧の慢性的上昇であり、肥満、妊娠のほか慢性気管支炎、喘息など頻繁に咳が出る病気、骨粗鬆症により背中が曲がることなど
症状
ヘルニアが存在するだけでは症状はほぼありません。
胃酸が逆流すると、突発的な胸痛、心窩部の痛みや不快感、嘔吐、呑酸、喉の詰まり感など
逆流性食道炎とほぼ同様の症状が出現します。
治療
食道裂孔ヘルニアによる酸逆流症状に対して治療します
① 内服治療
第一選択は薬物療法(プロトンポンプ阻害薬、ボノプラザンなど)です。これは逆流内容の主なものである胃酸を抑えることによって、胸やけなどの症状を抑え、食道炎を治癒させます。しかしGERDは再発率の高い病気で、内服をやめると再発してしまうことが多く、そのため、長期的に薬を飲み続けなければならない人が多くいらっしゃいます。
② 内視鏡的噴門部粘膜焼灼術 (ARMA アーマ)
内服治療で効果が得られない方は、内視鏡治療を行うことがあります。胃と食道のつなぎ目を、焼灼することで人工的に潰瘍を形成し、その潰瘍が治癒する過程で瘢痕収縮することにより、胃の入り口を引き締める治療です。
保険診療ではなく、自費診療です。限られた施設でしか治療できません。
③ 腹腔鏡下噴門形成術
薬物治療が効かない方や、大きな食道裂孔ヘルニア(胃の一部が胸腔内へ入り込む状態のこと)を伴っている方、あるいは患者さんが希望する場合などは、噴門形成術という外科的手術の適応となります。
食道裂孔ヘルニアについて概説しました。
みなさんの知識の助けになれば幸いです。