福岡天神内視鏡クリニックブログ

AST、ALTの話

おはようございます。医師の秋山です。今日は肝臓学会専門医の立場から、検診の採血で必ず調べるAST、ALTについてお話したいと思います。皆さんも検診の結果で一度は目を通したことがあるのではないでしょうか。

ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼという酵素で、人体でアミノ酸を作る働きをしています。どちらも肝細胞中に存在しており、肝細胞が壊れるとこれらの酵素が血液中に吐き出され、数値が上昇します。つまり、これらの数値が高いということは、肝細胞が壊れていることを意味します。これらの数値が高いから肝機能が低下しているわけではなく、肝細胞が壊れて肝臓がダメージを受けていると思ってください。正常値がどちらもだいたい40以下ですから、日常でもある程度肝細胞は壊れていることが分かります。それぞれの数値が少しでも正常上限を超えている場合は、医療機関で二次検査を受ける必要があります。正常範囲内であっても30以上であれば、「少し肝臓がダメージを受けてるな」と思った方がいいと思います。
このAST、ALTが高い人は、何かが原因で肝細胞がたくさん壊れていると考えます。肝細胞は再生しますので、短期間の数値上昇であれば肝臓の機能自体には問題ありませんが、何年も持続して高値が続くと肝細胞が破壊を再生を沢山繰り返し、そのうち肝臓が硬くなります。これを慢性肝炎、さらに硬くなると肝硬変となっていきます。そうなると肝機能は低下していきます。

さて、このASTとALTですが、なにが違うのでしょうか。
一番の違いは、それぞれが存在する臓器です。実はASTは肝臓だけでなく、心筋細胞や骨格筋細胞、赤血球などにも存在しています。対してALTはほとんどが肝臓に存在しています。つまり、ALTの方が肝臓の状態を反映しています。ですので、我々医師は、肝数値に注目する時はASTよりもALTに重きを置きます。肝臓学会での発表でも、肝数値の指標として、ALT値の変化をグラフ化して発表されています。

ASTがALTよりもすごく高い場合は肝臓以外の病気(心筋梗塞、筋肉の病気、血液の病気)を考え、AST、ALTともに高い場合やASTよりもALTの方が高い場合は肝疾患をまず考えます。ただし、お酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害の場合はASTの方がALTより高い場合が多いです。これはアルコールがALTの合成を阻害するからと言われています。

検診でAST、ALTの高値を指摘される人のほとんどは脂肪肝やアルコール性肝障害と考えて間違いないです。しかしながら中にはウイルス性肝炎や、肝腫瘍などの病気の方もいます。特に福岡県は自分では自覚していないウイルス性肝炎の人が多いので注意が必要です。

検診でAST、ALT高値を指摘されたら必ず詳しい検査を受けてくださいね。

私も毎年検診を受けています。今のところ肝機能検査を含めて異常は指摘されてないです。

癌にならない腸活 実践メルマガ講座 乳酸菌バナー 内視鏡チャンネルバナー