福岡天神内視鏡クリニックブログ

過敏性腸症候群(IBS)ってどんな病気?

おはようございます。
以前に上部消化管の機能性疾患である機能性ディスペプシア(以下FD)に関してお話しました。今回は下部消化管の機能性疾患である過敏性腸症候群(以下IBS)がどんな疾患なのかについてお話したいと思います。

IBSは、数ヶ月以上、排便回数や便の形の異常(便秘と下痢を繰り返す)があり、さらに排便に関連する腹痛を伴う時に疑われる病態です。FDと同じく血液検査や内視鏡検査などをしても症状の原因となる炎症や腫瘍などの器質的な異常はありませんが、つらい症状やそれに伴う不安のため日常生活の質が著しく低下します。

腸は食べ物を消化・吸収し、不要なものを便として体外に排泄する役割を持つ臓器です。腸がこの役割を果たすには、食べ物を運ぶための腸の収縮運動と腸の変化を感じとる知覚機能が必要になります。この収縮運動や知覚は脳と腸の間の情報交換により制御されていますが、ストレスなどが続くと、腸の収縮運動が激しくなり、また腸が知覚過敏の状態となり痛みを感じやすくなります。このため、IBSは感受性が強くストレスを受けやすい世代である10~30代の若者に多く見られ、入学・入社・異動の時期に発症しやすく、年を取るほど患者数は減ってくるのが特徴です。
また、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった場合、回復後にIBSになりやすいことが知られています。これは、感染によって腸に炎症が起き、腸の粘膜が弱くなるだけではなく腸内細菌のバランスが変化することも加わり、腸の収縮運動と知覚機能が敏感になると考えられています。

繰り返しになりますが、IBSは炎症や腫瘍など症状の原因となる器質的疾患が無いことが診断の大前提です。確定診断には、大腸癌などの悪性疾患や炎症性腸疾患などがないかを調べる必要があります。器質的疾患が疑われるような血便や発熱、体重減少、異常な身体所見などのアラームサイン(危険徴候)がある場合、また50歳以上の患者さんや過去に大腸の病気にかかったり、家族にそうした方がいるなどの危険因子がある患者さんは、IBS以外の疾患である可能性が高く要注意です。

いずれにしても便通異常がある場合は、まずは内視鏡検査で器質的疾患の有無を確認することをお勧め致します。このような症状で悩んでいる場合は、一度お気軽にご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。