福岡天神内視鏡クリニックブログ

その逆流性食道炎は実は好酸球性食道炎かもしれません

おはようございます。
前回、好酸球性食道炎ってどんな病気かについてお話ししました。

 

好酸球性食道炎は特定の食べ物などによるアレルギー反応が原因と考えられていますが、残念ながらまだ詳細は不明です。完全に治すのが難しい病気でもあり、厚生労働省により難病の一つに指定されています。さらに好酸球性食道炎には、実はまだ確定した診断基準というものもありません。現時点では下にお示しした平成21年に厚生労働省の研究班から出された「好酸球性食道炎の診断指針(案)」に基づき診断しています。

 

【好酸球性食道炎の診断指針(案)】
<必須項目>
①症状(嚥下障害、つかえ感など)を有する
②食道粘膜の生検で上皮内に20個/高倍率視野(HPF)以上の好酸球が存在している
*生検は食道内の数カ所を行うことが望ましい

<参考項目>
③内視鏡検査で食道内に白斑、縦走溝、気管様狭窄を認める
④CTスキャンまたは超音波内視鏡検査で食道壁の肥厚を認める
⑤末梢血中に好酸球増多を認める
⑥男性である
⑦プロトンポンプ阻害薬は無効でグルココルチコイド製剤が有効である

 

この①~⑦の項目のうち、①と②は診断に必須の項目であり、③~⑦の参考項目を満たせば好酸球性食道炎の可能性が高くなります
とくに、③~⑦の参考項目のうち、「プロトンポンプ阻害薬は無効でグルココルチコイド製剤が有効である」というのが好酸球性食道炎の確定診断には大切です。

 

その理由は、好酸球性食道炎と非常に似た病気であるプロトンポンプ阻害薬反応性食道好酸球浸潤(PPI-REE)を除外する必要があるからです。
逆流性食道炎などの胃食道逆流症がないにもかかわらず、胸やけなどの自覚症状があり、食道粘膜に好酸球が浸潤するという点でPPI-REEは好酸球性食道炎と非常に類似した病気です。しかし、この2つの病気の治療方法は大きく異なるため、どちらなのかを正確に診断する必要があります。

 

この2つの病気を区別するのに最も役立つのが胃酸分泌抑制剤であるPPIに対する反応の違いです。
PPIを服用するとPPI-REEでは症状が改善しますが、好酸球性食道炎では症状は改善しません。
このため、好酸球性食道炎が疑われた場合は、まず最初にPPIを投与して症状の改善の有無を評価し、好酸球性食道炎なのかPPI-REEなのかを診断することが大切になります。PPIで改善しない場合は、好酸球性食道炎と診断し、その治療を開始する必要があります。

 

このように好酸球性食道炎は逆流性食道炎と似た症状を認めますが、非常に診断が難しい病気です。
逆流性食道炎と診断されたのになかなか治らないという場合は実は好酸球性食道炎かもしれません。
気になる方は是非一度ご相談ください。

癌にならない腸活 実践メルマガ講座 乳酸菌バナー 内視鏡チャンネルバナー

秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。