福岡天神内視鏡クリニックブログ

細菌性腸炎について

おはようございます。

前回はウイルスによる感染性腸炎についてお話ししました。今回は細菌性腸炎についてお話ししたいと思います。

 

細菌性腸炎の原因となる菌には、カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、ウェルシュ属菌、ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌などがあります。平成30年の食中毒統計によるデータですが、細菌性腸炎の原因の半数以上は、カンピロバクター属菌と言われています。
カンピロバクター腸炎は、加熱の不十分な牛肉、豚肉、鶏肉などから感染するケースが多いと言われています。これらの食肉を食べる際にはしっかりと加熱をしましょう。

 

細菌性腸炎は、病原菌により腸管粘膜に組織傷害を起こし、炎症が強くなるため、ウイルス性腸炎と比べると腹痛が強く、発熱を伴うことが多く、粘血便を認めることもあります。細菌性腸炎の炎症は、一般的には大腸に近い遠位小腸から大腸が主体に起こりやすいため、下腹部を中心に腹痛を認めることが多く、ウイルス性腸炎と比べ下痢は少量です。また、小腸は肛門に近い部分以外は傷害されないことが多いため、吐き気や嘔吐は伴わないことが多く、あってもウイルス性腸炎と比べて軽度です。肛門に近い直腸に炎症を起こすと便意をもよおしても排便が無かったり、便が少量しか排出されないにもかかわらず頻繁に便意をもよおすという症状も出現します。この症状をテネスムスと言います。

 

一般的な細菌性腸炎の特徴は上に述べたものですが、例外もあります。
コレラや一部の大腸菌(腸管毒素原性大腸菌:ETEC、腸管病原性大腸菌:EPEC、腸管凝集性大腸菌:EAEC、分散付着性大腸菌:DAEC)、ジアルジアなどは、ウイルス性腸炎と同じように毒素による小腸型感染を来すため、多量の水様性下痢を認め、発熱は無いか、あっても微熱程度です。ウイルス性腸炎との違いは、血便を認めることや血液検査で炎症所見の高値を認めることですが、初期にはウイルス性腸炎と区別するのは困難です。

 

細菌性腸炎は、大腸粘膜に侵入して炎症を起こすため、一部は抗菌薬投与の適応となりますが、その多くはウイルス性腸炎と同様に自然治癒することが多いため、下痢による脱水や吐き気といった症状を緩和する治療である対症療法が治療の中心となります。
65歳以上の高齢者や重症の併存疾患(心疾患、肝硬変、腎不全など)、免疫不全状態がある方(AIDS、免疫抑制剤服用など)や重症例では、抗菌薬投与を検討します。

 

細菌性腸炎はウイルス性腸炎と比べると全体的に症状は強く出ますが、重症例以外は自然治癒することが多いため、下痢による脱水などの症状を緩和する治療である対症療法が治療の中心となります。消化が良い物を取れる範囲で少しずつ摂りましょう。また、経口補液などの糖分と電解質を含んだ水分も摂りましょう。

 

水分や食事が取れない場合や血便を認める場合は、必ず病院を受診しましょう。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。