福岡天神内視鏡クリニックブログ

大腸がんの危険因子①

おはようございます。
毎日、多くの患者さんの大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行っていますが、検査時に大腸ポリープを認めた場合は、どんなに小さくても将来の大腸がんのリスクとなるため、その場で切除を行っています。
検査後の説明の際に大腸ポリープがあったこと、切除したことをお話しすると、皆さん安心される一方で、「将来大腸がんにならないためには、どういったことに気をつければ良いでしょうか?」と良く質問されます。

 

そこで今回は大腸がんのリスク因子(将来大腸がんを引き起こす原因になるもの)について数回に分けてお話ししたいと思います。

 

大腸がんのリスク因子には、大きく分けると、①年齢、②性別、③遺伝的因子、④環境因子があります。

 

①年齢
他のがんと同じように、大腸がんも当然ながら年齢が高くなるに従い、がんが発生するリスクが高くなります。
私たちの体は日々新しい細胞に生まれ変わっていますが、高齢になるに従い、紫外線などにより細胞の設計図である遺伝子がうけたダメージが蓄積するため、不良品である細胞(がん細胞)が出来やすくなるのはイメージし易いと思います。
若い頃は不良品である細胞が作られる数が少ない上に、がん細胞が作られることがあってもナチュラルキラー細胞やT細胞などの体の免疫担当細胞の働きが活発なため、がん細胞を排除してくれます。しかし、加齢に伴い、がん細胞が作られる数が増え、さらに免疫力の低下とともに作られたがん細胞が排除出来なくなり、発がんしてしまうというイメージです。

 

②性別
厚生労働省による2018年のデータでは、臓器別のがん死亡数ベスト3は、第一位から男性では肺がん、胃がん、大腸がん、女性では大腸がん、肺がん、膵臓がんの順と報告されています。
臓器別のがん罹患数(そのがんにかかった人数)ベスト3は、第一位から男性では、前立腺がん、胃がん、大腸がん、女性では乳がん、大腸がん、肺がんの順と報告されています。
このように大腸がんはがん死亡数、罹患数ともに男女問わずいずれもベスト3に入る日本人に非常に多いがんです。

 

 

大腸がんの死亡数、罹患数ともに女性の方が男性よりも上位ですが、実は過去の様々な研究で大腸がん自体は女性よりも男性の方がかかりやすいと報告されています

 

え!?どういうこと?女性の方が上位なんじゃないの?と思ったのではないでしょうか?

 

では、何故実際の患者さんの統計順位では女性の方が多くなっているかというと、この統計は全てのがんの中で大腸がんにかかった人の割合がどれだけだったか、死亡した人の割合がどれだけだったかを見ているものだからです。あくまでもがんにかかった女性の中で、大腸がんが多い、大腸がんによる死亡が多いということなのです。

もちろん、このことから女性は大腸がんになりやすい、大腸がんで死亡しやすいというのは間違いありません。

 

しかし、そもそも2018年のがん死亡者総数は男性では約219000人、女性では約153000人と男性の方が女性よりも遙かにがん自体にかかりやすいのです。
男性と女性を比較すると男性の方が大腸がんにかかりやすいですが、男性は大腸がん以外のがんにもかかりやすいため、見かけ上、大腸がんの順位が女性よりも低くなるのです。

 

まとめると「女性は大腸がんにかかりやすいが、大腸がん患者自体は男性の方が多い」となります。

 

 

このことから私たち消化器内科医が皆さんにお伝えしたいメッセージは、「男女とも一定の年齢(40歳)になったら、一度は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けましょう」ということです。
大腸がんは定期検査を受けていると、予防が可能ながんの1つです。皆さんが一人でも大腸がんで亡くなるのを防ぎたい、それが私たちの切なる願いです。
次回は、遺伝的因子に関してお話ししたいと思います。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。