福岡天神内視鏡クリニックブログ

逆流性食道炎を考察する その5 食道は知覚過敏を起こすの?

おはようございます。

今回は逆流性食道炎シリーズの第5回です。

 

 

逆流性食道炎は食道に胃酸が逆流することで生じる食道粘膜の炎症が原因の病気のため胃内視鏡検査を行うと食道粘膜にびらんや潰瘍などの炎症所見を認めます。

しかし、胸やけや呑酸症状など症状があり逆流性食道炎を疑って胃内視鏡検査を行っても食道粘膜には炎症がない方がおられます。

 

このように食道粘膜に炎症がないにも関わらず、胸やけや呑酸症状などがあるもの非びらん性胃食道逆流症(NERD:non-erosive reflux disease)といいます。

 

 

逆流性食道炎は、ある程度の量の胃酸が食道に逆流するため、食道に粘膜傷害を生じますが、NERDでは、食道への胃酸逆流は認めないか、あってもごく少量のため、粘膜傷害は起こすまでには至りません。胸やけや呑酸症状があるにもかかわらず、内視鏡的な炎症所見がない場合に臨床的にNERDと診断します

 

NERDとは、分かりやすく一言で説明すると、食道が知覚過敏を起こしている状態です。

食道知覚過敏とは、食道の知覚が異常に過敏に反応している状態です。

ごく少量の胃酸や空気の逆流といった通常の状態であれば反応しないようなわずかな刺激を食道の粘膜が敏感に感じて胸やけなどの症状を引き起こしてしまうのです。

 

 

NERDは、胃酸逆流が全く無いにもかかわらず症状だけがある「機能性胸やけ」と少量ですが胃酸逆流がある「逆流性知覚過敏」の2つに分類されます。

1)機能性胸やけ

食道への胃酸逆流が無いにもかかわらず、胸やけ症状を認める疾患です。ストレスや不安による食道の知覚過敏に加え、食道の動きが過剰に強くなっていることが原因と言われています。

 

2)逆流性知覚過敏

胃酸の逆流は少量ですが、繰り返されることで食道粘膜が知覚過敏になり、少量の胃酸の逆流でも強い症状を感じるようになっている状態です。

 

 

NERDが機能性胸やけと逆流性知覚過敏のどちらであるかの確定診断は、胃内視鏡検査での視覚的な診断は出来ないため、実際に食道に胃酸が逆流しているかどうかを24時間モニターする24時間食道インピーダンス・pHモニタリングという検査が必要となります。

この検査はかなり特殊な検査のため、当クリニックでは実施できませんが、必要がある場合には適切に実施できる医療機関を紹介いたします。

 

 

「機能性胸やけ」と「逆流性知覚過敏」の原因は、いずれもストレスや不安、不眠などと考えられています。

過去の研究で睡眠障害によるストレスを与えると胃酸が逆流して胸やけ症状が増強することが報告されており、様々なストレスが食道の知覚過敏を引き起こすと考えられています。

 

 

特に逆流性食道炎の患者さんよりもNERDの患者さんでは食道の知覚過敏を起こしやすく、ストレスの影響で症状が悪化しやすい傾向が強いことが分かっています。

症状があると誰でも不安になりますが、NERDの場合は不安になるとさらに症状が強くなってしまうという負の連鎖に陥ります

このため食道の知覚過敏が疑われた場合は、しっかりと休息をとり、ストレスを遠ざけることが最も大切です。

 

 

NERDの診断は、胃内視鏡検査を受けて、食道や胃に他に異常が無いことが診断の大前提です

症状がある場合は、絶対に放置せず必ず消化器内科を受診し、胃内視鏡検査を受けましょう。

自分で判断し、様子をみるのは大変危険です!!食道がんや胃がんが隠れている場合もあります。

お悩みの場合は、是非一度ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。