おはようございます。
当院では毎日多くの患者さんに対して胃カメラ検査を行っていますが、胃カメラ検査を行うと胃にポリープが見つかるケースがあります。
検査後の説明時に「胃にポリープがありましたよ」と説明すると、多くの方は「大丈夫でしょうか?」と心配されます。
心配されるのは当然ですよね。
ポリープって聞くと、良性であってもすぐに治療しなければいけないのでは?と思ってしまいがちですが、実は大腸と違って胃の場合は治療しなくて良いポリープの方が多いです。
ところでそもそもポリープって何でしょうか?
胃のポリープとは、医学的には「胃に発生する良性の上皮性の隆起性病変」です。
難しいですね。簡単に言い換えると、「胃の粘膜から発生した良性の盛り上がったできもの」です。
胃カメラ検査時によく遭遇するポリープは、ほとんどが胃底腺ポリープと過形成ポリープの2種類です。
そこで今回は、胃の良性のポリープの中で最も良く認められる胃底腺ポリープについてお話ししたいと思います。
胃底腺ポリープは、周囲の正常な胃粘膜と同じ色調の良性のポリープです。
表面は平滑でツルツルした印象を与えるポリープです。
中年女性に多く認めますが、男性や若い人でも認めます。
多くはサイズが5mm以下と小さなポリープです。多発することも多く、経過観察中にサイズが増大したり、逆に縮小したり自然消退することもあるポリープです。
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していない綺麗な胃粘膜に発生することが多く、胃の胃底腺領域(ひだがある部分)に発生しやすいポリープです。
胃カメラ検査後に、「胃にポリープがありますが、経過観察で問題ありません。」と医師から言われた場合は、その多くがこの胃底腺ポリープです。
胃底腺ポリープが出来る原因は、実はまだはっきりしていませんが、女性に見られることが多いことから女性ホルモンなどの関与が考えられています。
また、逆流性食道炎などの治療に用いる強力な酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI:proton pump inhibitor)を長期間にわたって服用すると胃底腺ポリープが新たに発生したり、増加するという報告もあります。このPPIの長期服用で発生した胃底腺ポリープは、PPIの服用を中止すると縮小、減少すると報告されています。
胃底腺ポリープ自体は、胃痛などの症状の原因にはなりません。
ポリープ自体に症状は無く、人間ドックや検診のバリウムによる胃レントゲン検査や胃カメラ検査で偶然見つかることがほとんどです。胃痛などの症状があり、胃カメラ検査を受けると見つかることもありますが、その場合もポリープ以外の胃炎などが症状の原因です。
胃底腺ポリープと確定診断するには、胃カメラ検査で直接ポリープの形や表面構造、色調などを観察することが必要です。場合によっては、ポリープの表面の組織を一部とって顕微鏡で病理組織学的に調べます。
胃底腺ポリープは基本的にはがん化のリスクは極めて低い良性のポリープです。
このため、通常は切除などの治療は不要です。
しかし、非常に稀ですが、がん化の報告もあるため、胃底腺ポリープと考えられてもフォローアップ中にサイズが大きくなった場合や、表面に凹凸不整などが認められる場合は、生検による病理組織診断まで行い、悪性化していないかをチェックする必要があります。
悪性化している場合や細胞異型が出現している場合は、内視鏡での切除が必要となります。
このため、胃カメラ検査などで胃底腺ポリープを指摘された場合は、年に1回は胃カメラ検査を受けて、サイズが大きくなっていないか、表面に凹凸不整などの変化が出てきていないかフォローしましょう。
お悩みの場合は、是非一度ご相談ください。