福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その3 保険診療でのピロリ菌感染診断と治療

おはようございます。

 

前回、ピロリ菌の感染状況の分類とそれぞれの胃がん発生のリスクについてお話ししましたが、今回は保険診療でのピロリ菌の感染診断と治療の手順についてお話ししたいと思います。

 

人間ドックなどのオプション検査や胃がんリスク検診であるABC検診でピロリ菌感染を調べることはできますが、実はこれらの検査でピロリ菌感染が疑われただけでは、保険診療でピロリ菌の除菌治療を行うことが出来ません。

皆さん、ご存じでしたか?

 

え!?どういうこと?

ピロリ菌に感染しているのに、どうして除菌治療が出来ないの?と思われたのではないでしょうか?

 

実は、保険診療では、ピロリ菌感染を調べる検査も除菌治療も、これらを受ける日の半年以内前に先に胃カメラ検査を受けておいて、ピロリ菌感染によるものと考えられる胃炎が存在することが事前に確認されていなければ検査や治療を受けることが出来ないという取り決めになっています。

 

つまり、保険診療では、ピロリ菌の診断・治療と胃カメラ検査を行う順番が明確に決まっていて、このルールを満たさない場合は、保険適応外になるんです。

 

もちろん、人間ドックなどのオプション検査は、保険診療では無く、自費診療なので検査前に胃カメラ検査を受けておく必要は無く、感染診断の検査だけを先に受けることは可能です。

しかし、自費のピロリ感染診断で感染が疑われた場合も、結局は保険診療で除菌治療を行うのであれば、除菌治療をする前に先に胃カメラ検査を受けていなければならないため、やはり胃カメラ検査は、必須になってしまいます。

 

ちなみに、胃のバリウム検査でもピロリ菌感染によるものと考えられる胃炎を疑うことが出来ますが、この場合であっても、やはり保険診療でピロリ菌感染の確定診断の検査と除菌治療を行う場合には、胃カメラ検査を先に受け直す必要があります。

 

少し分かりにくかったかもしれませんが、要するに「保険診療でピロリ感染診断や除菌治療をするためには、先に胃カメラ検査が絶対に必要!!」ということです。

 

ではなぜ、ピロリ菌感染診断や除菌治療をする前には胃カメラ検査が必須になっているのでしょうか?

日本消化器病学会H.pylori診断治療委員会は次のような見解を述べています。

 

ピロリ菌感染がある場合は、必ず慢性活動性胃炎を起こしており、胃癌をはじめとしたピロリ菌関連疾患が既に胃内に存在している可能性があり、特に日本では胃癌を合併しているケースが多いため、除菌治療前にまずは胃癌の有無を胃カメラ検査で確認しておくべきという見解です。

 

胃のバリウム検査ではなく、胃カメラ検査でないといけない理由は、述べられていませんが、恐らくこれに関しては、本当に初期の早期癌は胃のバリウム検査では発見が困難であるという点からだと思われます。

 

また、除菌治療前に胃カメラ検査が必要な理由としては、本当に早期の胃癌があった場合、先に除菌治療をすると、胃癌が分かりにくくなるため、その後の胃カメラ検査で見逃され、数年後に進行癌で発見されるといったケースもあることを危惧しているものと推察されます。

 

健診でピロリ菌感染が疑われ、受診された方の中には、胃のバリウム検査を受けているのに胃カメラ検査まで受け直さないといけないの?という方がいらっしゃいますが、このような理由から保険診療では除菌治療前に胃カメラ検査を受ける必要があります。

ご不明な場合は、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。