福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その4 ピロリ菌感染と胃炎の進行について

おはようございます。

 

今回はピロリ菌感染により、どのように胃炎が進行していくのかについてお話ししたいと思います。

 

正常な胃の粘膜は、胃の領域によって3つの異なる粘膜から構成されています。

胃の出口近くすぐの領域を幽門部といいますが、幽門部周辺の胃粘膜は幽門腺粘膜から構成されています。

胃と食道のつなぎ目である食道胃接合部のすぐ下の幅1mm程度の領域は噴門部といいますが、噴門部の胃粘膜は噴門腺粘膜から構成されています。

そして最後に、幽門部と噴門部の間の胃の大部分を占める前庭部近位側から食道胃接合部直下までの領域の胃粘膜は胃底腺粘膜で構成されています。

つまり、正常な胃の場合、胃の入り口付近と出口付近にそれぞれ少し噴門腺粘膜と幽門腺粘膜が存在しますが、胃のほとんどは胃底腺粘膜として存在しています。

 

ピロリ菌は5歳までに感染しますが、胃内であればどこにでも感染するわけではなく、まず最初に胃の出口近くすぐの幽門部の幽門腺粘膜(幽門腺領域)に感染します。

胃にヘリコバクター・ピロリ菌が感染すると、ピロリ菌により胃には持続的な活動性の炎症が引き起こされますが、ピロリ菌感染が継続すると、胃の出口付近から入り口付近に向かってこの活動性炎症が徐々に上に向かって拡がっていきます。

つまり、ピロリ菌の感染は、はじめは幽門腺領域のみに起こりますが、徐々に胃底腺領域へと拡がり、そのまま感染を放置しておくとやがて胃全体に及ぶことになります。

 

ピロリ菌に感染した胃の細胞を顕微鏡で病理学的に調べると、炎症細胞である好中球が集まっており、活動性の炎症を引き起こしていることが確認出来ます。

胃底腺粘膜にピロリ菌の感染が起こり、胃粘膜の活動性炎症が持続すると、この炎症により、胃の細胞に変化が起こりはじめます。

どのような変化が起こるかというと、炎症により破壊された胃粘膜が再生される際に元の胃底腺粘膜ではなく、正常では胃の出口付近の幽門部のみに存在する幽門腺粘膜に置き換わって再生されます。これを胃粘膜の置換といいます。

 

胃底腺粘膜に比べて幽門腺粘膜は薄く、内視鏡で観察すると色調が白っぽく見え、粘膜下の血管も透けて見えます。これが、萎縮性胃炎です。

つまり、ピロリ菌感染による活動性炎症で胃底腺粘膜が幽門腺粘膜に置換された状態が萎縮性胃炎です。

 

さらに、ピロリ菌感染による活動性炎症が持続し、胃粘膜上皮が破壊と再生を繰り返すと、胃粘膜が腸管粘膜上皮の形態に変化していきます。これを腸上皮化生といいます。

 

ピロリ菌感染は胃がんの発生リスクとなりますが、胃炎の状態により発生する胃がんのタイプが異なると考えられています。

次回は、胃炎の状態と発生する胃がんのタイプについてお話ししたいと思います。

ご不明な点がありましたら、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。