福岡天神内視鏡クリニックブログ

ピロリ菌を考察する その6 胃炎の京都分類

おはようございます。

 

「胃炎の京都分類」って聞いたことありますか?

一般の方は、まず耳にすることがないかもしれませんが、私たち消化器内視鏡専門医で知らない医師は一人もいないといっても過言ではないぐらい有名な胃炎の分類です。

 

これまで、世界中で多くの消化器内科医が「胃炎の診断」、「胃炎と胃がんの関連性」、「胃炎の内視鏡検査時の所見との関連性」などについて研究され、様々な胃炎に関する分類や胃がんのリスク評価が行われてきました。

 

その後の多くの研究で、胃がんのほとんどは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染に伴う活動性炎症の持続による慢性胃炎が原因であることが明らかにされました。

 

その後、2013年にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が保険適用となり、ピロリ菌感染を早期に診断する重要性が高まってきました。

この流れを受けて、胃カメラ検査を受ける目的が、これまでに胃がんなどの胃の病気の早期発見をすることに加えて、ヘリコバクター・ピロリ菌感染胃炎の有無も的確に診断することも求められるようになりました。

胃カメラ検査で感染診断を行い、感染が判明した場合は、除菌治療へと速やかに誘導することで胃がんの発生リスクを低減させ、将来、胃がんで亡くなる人を撲滅することが私たち消化器内視鏡専門医の責務として求められるようになりました。

 

そこで、2013年5月に京都で開催された第85回日本消化器内視鏡学会総会において「胃がん撲滅に向けた内視鏡的胃炎の意義」」というシンポジウムと「新たな内視鏡的胃炎、updated京都分類を目指して」というワークショップが設けられ、この2つの主題がこの京都での学会で報告・討論されました。

この第85回日本消化器内視鏡学会総会終了後に川崎医科大学消化管内科学教授であった春間賢先生を中心とした「京都の胃炎分類」作成委員会が設立され、客観性のある胃炎所見をヘリコバクター・ピロリ感染の状態に準じて取り上げ、この胃炎の内視鏡所見から胃がんリスクを評価することを目的に2014年9月に「胃炎の京都分類」が成書として発表されました。

 

この胃炎の京都分類は、現在、多くの内視鏡専門医において、ヘリコバクター・ピロリ感染診断、胃がんリスク評価の重要な診断指針となっています。

胃炎の京都分類の診断指針を元に内視鏡検査を行うと、それまでの胃カメラ検査では異常がないと診断されていた患者さんの中にも、ピロリ菌の現感染所見が認められるようなケースにしばしば遭遇します。

胃炎の京都分類だけでは、ピロリ菌感染を100%診断することは出来ませんが、この分類を用いることで内視鏡検査所見からヘリコバクター・ピロリ感染診断が非常に高い精度で推測することが可能になりました。

これにヘリコバクター・ピロリ感染を確定するための他の診断検査を組み合わせることで、過去には見逃されていたようなヘリコバクター・ピロリ感染を正確に診断し、除菌治療へと繋げることが可能になりました。

 

このように胃炎の京都分類は、私たち消化器内視鏡専門医にとって、ピロリ菌感染診断、ひいては将来の胃がんの発生リスクの低下に大きく寄与する大変重要な分類です。

 

私たち消化器内視鏡専門医は日々、胃がんで亡くなる人を一人でも減らしたいという想いで日々、頑張っています。

ご家族にピロリ菌感染していた人がいる、胃がんにかかった人がいる、胃の不快な症状があるなどがある場合は、若くても一度は胃カメラ検査を受けましょう。

ご不明な点がありましたら、ご相談ください。

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秋山 祖久総院長

国立長崎大学医学部卒業。
長崎大学医学部付属病院・大分県立病院など多くの総合病院で多数の消化器内視鏡検査・治療を習得。2018年11月より福岡天神内視鏡クリニック勤務。